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起業のための「3C分析」

3C分析

「市場・顧客」の分析から顧客のニーズを把握し、 「競合」の分析から競合他社の強みや弱みを理解し、 「自社」の分析から顧客ニーズを満たし、競合に勝つための戦略を練るために行います。

目次

3C分析の具体的な説明とポイント

3C分析とは

ビジネスには、顧客や取引先、従業員や金融機関など様々なステークホルダーが存在します。
その中でも、営業面のマーケティングに特化した関係者に絞って分析するフレームワークが「3C分析」です。

市場・顧客(Customer)、競合(Competitors)、自社(Company) の3つの観点で分析を行います。
3C分析は、事業計画やマーケティング戦略を決定する際などに用いられます。

顧客 → 競合 → 自社
の順に情報を整理してください。

顧客のニーズに対して自社が何を提供できるのか?を考えることが重要です。

「市場・顧客」の分析から顧客のニーズを把握し、
「競合」の分析から競合他社の強みや弱みを理解し、
「自社」の分析から顧客ニーズを満たし、競合に勝つための戦略を練るために行います。

ここでは、起業時に必要な情報収集の観点やその情報を整理するために3C分析をどう活用するかを解説していきます。

顧客(Customer)の分析

「3C分析」に限らず、マーケティングで1番重要なのは「顧客」です。
顧客が求めている商品やサービスを提供することができれば必ず売れます。

顧客を理解するためには、同じニーズや属性などで分類する必要があります。
そのような分類をセグメントといいます。
代表的なセグメントとして、デモグラフィック(人口統計学的属性)、サイコグラフィック(心理学的属性)、ジオグラフィック(地理学的属性)、ベヘイビオラル(行動学的属性)の4つが挙げられます。

デモグラフィック(人口統計学的属性)

デモグラフィックとは人口統計学的な属性のことであり、年齢・性別・学歴・職業・家族構成・所得・居住地などで分類します。
目に見える属性として比較的分類しやすいため、顧客分析で最も使われている属性になります。

例えば、「40代子育て世代の女性」「○○エリアに住んでいる大学生」など、実社会で自然とセグメント化されている属性に近く、分類しやすい特性を持ちます。

サイコグラフィック(心理学的属性)

サイコグラフィックは心理学的属性のことで、顧客の価値観・信念・趣味嗜好・ライフスタイルなどが含まれます。
デモグラフィックと比較して目に見えない属性で、顧客の内面に存在しているものになります。

例えば、「コスパよりも質を重視する」「家庭と仕事の両立を考えている」など、心理的な属性によって分類されます。

ジオグラフィック(地理学的属性)

ジオグラフィックは地理学的属性のことで、デモグラフィックと同じ居住地の情報も含まれます。
より地理的な特性に特化したもので、都市の規模・人口密度・気候・文化などの属性で分類されます。

例えば、「都会だと電車(駅)中心、地方だと車所有率が高い」など、地理的特性を考慮して分類されます。

ベヘイビオラル(行動学的属性)

ベヘイビオラルは行動学的属性のことで、顧客が行動する曜日・時間や購買の状況・経路・頻度などを分類します。
対象となる行動は、実店舗で購入する場合からECサイトで購入する場合等まで多岐に渡ります。

例えば、「金曜日の夕方にスーパーに立ち寄って購入」「ECサイトで月一回定期購入」など、購入に至る状況や頻度などを分類します。

自社の商品やサービスをどのような顧客が購入するのか?
その市場について分析し、正確に把握することが重要なポイントです。

競合(Competitor)の分析

独占市場でない限り、競合先がいないということは基本的にはありえないことです。
「ライバル企業はどこですか?」と顧客に質問することは多いのですが、よくある回答は2種類あります。
1つ目は、「わからない」。2つ目は、「その市場で一番大きな会社」です。
どちらの場合も、競合がどこなのかを把握していない状況です。

ライバル企業も様々な戦略を立てて、競争に勝つために日々活動しています。
ライバル企業が今何をしているのか?その状況をタイムリーに把握することが重要です。

競合を特定する

普段から意識している競合以外にも、客観的な目線でライバル企業を調査する必要があります。
そのためには、インターネットの検索サイトを活用し、顧客目線で競合を特定しましょう。

  1. 顧客分析で特定した顧客が検索するであろうキーワードを想定する
  2. そのキーワードでGoogleで検索する
  3. 上位に表示される企業を競合としてリストアップする

1.で想定したキーワードは、自社が検索されたいキーワードでもあると思います。
そのキーワードで上位に表示されるライバル企業は、自社の対象顧客を多く獲得しているであろうと推測されます。

競合の強み・弱みを分析する

競合を特定したら、それぞれの強み・弱みを分析します。
以下のような観点で、競合のホームページ・集客チラシ・ネット上の口コミなども活用し情報を収集します。

  • 競合の商品・サービスにはどのような強み・弱みがあるか?
  • 競合が強い地域はどこか?未進出の地域はどこか?
  • どのような営業体制・方法で集客しているのか?
  • 顧客がなぜ競合の商品やサービスを利用するのか?
  • ネット上の口コミではどのように評価されているのか?

ライバル企業が直接公開していない情報については、インターネットを積極的に活用して調査しましょう。
近年はGoogle等の口コミやSNS上の顧客の声など、ネット上に顧客の声が公開されているため、情報が集めやすくなりました。
また、集客向けのWebサイトに力を入れている企業が増えたため、サイトの内容から対象顧客や事業戦略などが推測できるようになりました。
そのような情報から、特に自社と営業方針や対象顧客が重複するライバル企業については、強みと弱みを知っておく必要があります。

自社(Company)の分析

3C分析の目的は、顧客のニーズを知り、顧客がなぜ競合の商品やサービスを利用するのかを分析することです。
そして、自社の強みや弱み、経営資源や業績などを分析することで、課題を発見することが重要です。

自社の強み・弱みを分析する

競合の強み・弱みを分析したら、次に自社の強み・弱みを分析します。
例えば以下のような観点で、顧客のニーズに対し競合との比較や自社の分析を行います。

  • 競合に対し自社のほうが優れている強みは何か?
  • 競合に対し自社のほうが劣っている弱みは何か?(課題は何か)
  • 現在競合に対し劣っているが、課題を解決すると強みに変わる領域はないか?
  • 競合が未進出の地域で自社が進出可能な地域はどこか?
  • 顧客がなぜ自社の商品やサービスを利用するのか?
  • ネット上の口コミではどのように評価されているのか?
  • 顧客のニーズに対し、競合以上に自社でできることはないか?

自社の強み・弱みを分析するには、「SWOT分析」というフレームワークが活用できます。
自社の内部環境・外部環境ごとにそれぞれ、強み・弱み・機会・脅威を分析することで、自社を取り巻く状況が整理されます。

KSF(Key Success Factor)を整理する

自社の強み・弱みを分析したら、競合に勝つために必要な課題が見えてきます。
その課題を解決するための「重要成功要因」をKSF(Key Success Factor)と呼びます。
CSF(Critical Success Factor)とも呼びます。
KSFとは、成功するために必要な鍵となる要因のことで、これを達成しないと成功確率は上がりません。
例えば以下のような例が挙げられます。

  • 顧客ニーズに応えるための新商品・新サービスの開発
  • 競合と差別化するための新技術の実用化
  • 顧客に質の高いサービスを提供するための従業員教育
  • Webマーケティングを遂行するための人材獲得
  • 設備投資のための資金調達

3C分析の結果から、上記のようなKSFを導き出します。
それらのKSFが成り立たないと事業計画がうまく進まないため、認識したKSFについては確実に達成する必要があります。

3C分析の具体的な方法

B2C(企業と一般消費者の取引)と
B2B(企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業)ではやり方が異なります。
ここではB2Cを想定した分析の流れを整理していきます。

ペルソナを作ろう

ペルソナマーケティングとは、自社の製品やサービスを利用する「代表的な顧客」を仮想的な人物像に落とし込むことです。 その顧客像のことを「ペルソナ」といいます。

3C分析における顧客分析とは、ペルソナを設定することだと考えるとわかりやすくなります。

ペルソナを設定

ペルソナの基本情報を設定する

まずはデモグラフィックから行います。

代表的な顧客はどんな人か?
性別、年齢、住所、家族構成などを考えてみましょう。

性別は? 女性
年齢は? 30歳
住所(地域)は? 福岡市東区香椎
最終学歴は? ○○看護専門学校卒業
仕事は? 専業主婦。看護師をしていたが、出産を機に退職。
所有するデバイスは? iPhone、ノートPC
利用しているSNSは? インスタグラム、Twitter、LINE
家族構成は? 夫(35歳)と子1人(5歳)
年収は? 500万円

ペルソナの性格や価値観を設定する

性格、ライフスタイル、趣味などの心理的な特性である
サイコグラフィックに関する情報を整理します。

サイコグラフィックを設定するためには、日頃から顧客や見込み客に対してアンケートやインタビューなどを行う必要があります。
起業する前なので情報が少ないと感じる場合は、早い段階でたくさんの人から情報を集めることが重要です。

性格は? 温厚、責任感が強い
ライフスタイルは? インドア派
趣味は? 料理、映画鑑賞
志向は? 健康志向
価値観は? 経済性より質の高さを重視

ペルソナの行動を設定する

ペルソナが日頃どのような行動をとっているのか整理します。
例えば、よく購入する商品について分析する場合、なぜ購入したのか?どの程度の頻度で購入するのか?など深堀していきます。

  • よく購入する商品は何か?
  • 購入の決め手は何か?
  • 何回購入したか?
  • 購入頻度はどれくらいか?
ペルソナのメディアとの接点

ペルソナが「いつ」、「何の目的で」、「どれくらいの時間」メディアに接触しているかをまとめます。 メディアとの関わりを把握することで、商品やサービスをどのように認知してもらい購入に至るのかを考えるヒントになります。

テレビ 7:00~8:00
朝の情報番組で前日のニュースを把握する
20:00~22:00
バラエティー番組などを見る
YouTube 9:00~12:00
家事の合間にお気に入りのチャンネルを見る
インスタグラム 22:00~23:00
就寝前に閲覧・投稿する
Twitter 隙間時間にチェックする
LINE 通知があればすぐににチェックする
インターネット yahooをホームに設定しており、気になるニュースを中心に閲覧する
ペルソナの生活習慣を設定する

業種や職種によっては、ペルソナの生活パターンを定義することで、商品やサービスの開発のヒントになることがあります。

時刻 平日 休日
7:00 起床 起床
7:30 朝食
8:00 幼稚園のお見送り
9:00 掃除
10:00 洗濯
11:00
12:00 昼食 昼食
13:00
14:00
15:00 幼稚園のお迎え
16:00 買い物
17:00
18:00 夕食 夕食
19:00 風呂に入る 風呂に入る
20:00 テレビを見る テレビを見る
21:00 テレビを見る テレビを見る
22:00 インスタグラム閲覧・投稿 インスタグラム閲覧・投稿
23:00
24:00 就寝 就寝

商圏を明確にしよう

全国展開なのか?地域密着なのか?
業種や職種で分かれると思います。

地域密着型であっても都道府県全域を対象とするのか?
特定のエリアに絞るのか?

起業してすぐは広い範囲で営業活動をせず、できるだけエリアを絞ってください。
ただし、絞りすぎると営業活動に支障がでますので、「広すぎず狭すぎず」がポイントになります。

行政のホームページを活用する

各市区町村のホームページには、人口や世帯数などのデータが掲載されています。
また、国がまとめている白書にも様々な統計データが掲載されています。

自分の事業に関係があるデータを収集し、市場規模を把握することが重要です。

「福岡市東区の統計」で検索すると様々な統計情報がヒットします。
行政や信頼できる企業が公開している情報を整理し、市場を把握しましょう!

事例 私の起業ストーリー

私の場合はB2Bビジネスで起業しましたので、上記のB2Cビジネスとはやり方が異なります。
3つのCの観点で顧客 → 競合 → 自社の順番で分析する流れは同じです。

私の起業の経緯は以下の通りです。

システム会社に勤務し、大企業の下請けで業務効率化を推進するシステムの開発を行っていた。
大企業と中小・零細企業のIT投資に対する格差を目の当たりにした。
中小・零細企業に安価で便利なシステムを提供したいと考えるようになった。
中小・零細企業の売上アップと業務効率化を同時に実現するECシステムを企画・開発しようと起業に至った。

顧客の分析

B2Cの場合では、年齢・性別・職業・家族構成などの顧客属性をセグメント化しますが、B2Bの場合ではそれを法人に置き換えます。
例えば、創業年数・業種・営業形態・売上規模・従業員数などが該当します。
私の場合は、以下のような顧客属性を設定しました。

顧客の属性

所在地 鹿児島県内の企業
業種 食品製造業
営業形態 通販(電話・FAX・ネット)で全国の消費者に直販
創業年数 10年以上
売上規模 1億~10億円
従業員数 50人以下

顧客の現状

創業時から鹿児島の特産品を製造・販売している。
10年程前より通販で全国の消費者に販売しており、現在は売上に占める通販の割合が8割を超えるようになった。
3年前よりECサイトも開設し、ネット通販と電話・FAX注文を受け付けている。
ネット注文はECサイトのシステムを利用しているが、電話・FAX注文は毎回手書きの伝票に注文内容を書き起こしている
特に電話注文は、電話受付時のメモ→注文伝票→運送伝票と転記が多いため、注文が殺到すると仕事量が増え、転記ミスも多発している。
繁忙期はネットと電話注文が殺到し、夜中まで注文処理に追われることがある。

競合の分析

大企業のように多額の費用をかけて自社専用の通販システムを開発する例は除外し、中小・零細企業が現実的に導入可能な競合に絞り分析を行いました。
分析を行うと、ECサービス、ECソフト、直販ソフトの大きく3つの競合に分類されました。

A社 B社 C社
システム形態 ECサービス ECソフト 直販ソフト
営業形態 インターネット 地場の制作会社 全国に支店
初期費用 0~10万円 50~300万円 数百万円
月額費用 数千円 数千~数万円 不明
ネット注文 ×
電話・FAX注文 × ×

上記比較表でも分かる通り、ネット注文と電話・FAX注文両方に対応したシステムは、安価では存在しませんでした。
顧客のニーズはネット・電話・FAX注文を一元管理するシステムです。
しかし、システム会社は開発に多額の費用がかかる事や、製品を売りやすいように専門システムにするケースが多く、ここに競合の弱みがありました。

自社の分析

上記の顧客ニーズや競合分析結果を踏まえたうえで、自社の強みや弱みを分析しました。

自社の強み

  • ・大手企業の基幹業務システム開発経験がある
  • ・集計やシステム間連携を伴う複雑な業務システムを開発できる
  • ・WebサイトやWebシステムの開発経験があり、ECサイトを開発できる
  • ・後発なので、最初からネット注文と電話・FAX注文を統合する想定で開発できる

自社の弱み

  • ・創業したばかりで会社の知名度と営業力がない

これらの強み・弱みを分析し、立案した事業戦略が以下になります。

経歴概要

2008年に個人事業を開業し、翌年に株式会社SESHを設立しました。 鹿児島市のニュービジネスプランコンテストで2年連続大賞を受賞した経験もあり、事業計画書の策定には強みがあります。 主な業務として、経営全般の企画や管理を行っていますが、 特にWebマーケティングやディレクション、および顧客の経営コンサルティングを担当しています。