数値計画の一番弱い仮説
「平均継続4ヶ月」は、解約の予言だった
第2回で月額の値段を決めたとき、数値計画には 「融資サポート(月4,980円)の平均継続は4ヶ月」という仮説を置きました。 根拠は、融資の準備にかかるおおよその期間です。
あらためて見ると、この数字は不吉な予言でもあります。 お客様の立場では、月4,980円は「計画書を仕上げて出すまでの費用」。 計画書が出せたら──つまり私のサービスが役目を果たした瞬間に──払い続ける理由が消えます。 成功するほど解約される設計です。
サブスクの売上は「会員数×単価×継続月数」でできています。 会員数はサイトの集客に、単価は据え置くと決めた価格に縛られる。 いま自分の設計だけで動かせるのは、継続月数だけでした。
「出した後」に価値の空白がある
では、計画書を出した後のお客様には、支える価値が何も無いのか。逆でした。 融資が通った後こそ、開業実務の本番です。 Googleビジネスプロフィールの登録、ホームページ、アクセス解析、資金繰りの型づくり── やるべきことは山ほどあり、しかも「次に何をすればいいか」が一番わからない時期です。
このサイトには、その答えにあたる記事がすでにありました。 Web・IT基盤の作り方、SEO講座、アクセス解析講座、決算書の見方講座。 素材はそろっているのに、「いまのあなたは次にこれ」と届ける仕組みが無い。 価値の空白ではなく、導線の空白だったのです。
そこで、開業後の実務をタスクとして提示し、こなしてもらい、完了を記録して次へ進む 「開業タスク」という機能を作ることにしました。 人が伴走するサービスにはしません(そう決めた理由は第1回の「ソフトウェアとして定義する」に戻ります)。 タスクの提示も、完了へのひとことコメントも、すべてシステムとAIで完結させます。
作りながら決めたこと
プランを増やさない
最初に迷ったのは、この機能を「第3の有料プラン」にするかどうかでした。 開業後の伴走は、融資準備とは別の価値です。別料金にする理屈は立ちます。
結論は、プランを増やさず、融資サポート(月4,980円)に内包する。 理由は、この機能の目的が「新しい売上」ではなく「継続の理由」だからです。 計画書を出した後も会員でいる理由を作るための機能を、別プランに切り出したら本末転倒です。 それに、プランが3つに増えると、料金ページの説明も、権限の実装も、検証の読み解きも、全部が複雑になります。 値段は変えず、同じ値段の中身を濃くする──今回はそちらを選びました。
無料と有料の線は「原価」で引く
機能のどこまでを無料にするかは、第4回のセルフチェックと同じルールで決めました。 原価がかからない部分は無料で試食、AIが動く部分から有料です。
- タスク一覧・チェック・完了メモの記録 ─ 会員なら無料(何度使われても費用が増えない)
- 完了メモへのAIコーチのコメント ─ 融資サポート会員向け(AIの呼び出しに原価がかかる)
無料部分は、それ自体が「サイトに戻ってくる理由」になります。 チェックリストの続きがあるサイトは、また開かれる。 線引きのルールを一度決めておくと、機能ごとに悩まなくて済むのも利点でした。
新しく書くより「つなぐ」
タスクは、開業の手続き・商売の器・見える化・集客の初速・お金の型・改善サイクルの6カテゴリに分けて、20個用意しました。 作ってみて気づいたのは、新しく書いたものがほとんど無いことです。 タスクの大半は、既存の記事とツールへの結線でした。
タスクを起点に解説記事へ、記事からツールへ、そしてタスクの完了メモは検証記録へ転記され、 事業計画書の「見通しの根拠」として積み上がっていく。 第4回で書いた「新しく作らない」の続きですが、今回はもう1つ発見がありました。 タスクにしてみると、足りない記事が正確にわかるのです。 「GBPに登録する」「SNSを始める」の解説先が無かったので、この2本だけ後から書き足しました。 先に器(タスク)を作ると、埋めるべき中身(記事)の優先順位が向こうから決まってくる──書く順番が逆転した回でもありました。
測り方と、あなたへの転用
成否は「平均継続月数」で測る
この機能が効いたかどうかは、印象ではなく数字で判定します。 見るのは平均継続月数──仮説の4ヶ月より伸びたかどうか。 あわせて、タスクの完了率と、週にサイトを開く会員の数を見ます (タスクのチェックリストが「戻ってくる理由」として機能したかの計測です)。
正直に書けば、「伴走があれば継続が伸びる」もまだ仮説にすぎません。 事前登録の答え合わせと同じで、判定はサイト公開後の数字に委ねます。 ただ、何も作らずに4ヶ月の予言を眺めているより、 反証できる形で手を打っておくほうが、検証としては前進のはずです。
あなたの事業への転用
今回の判断は、3つの問いに言い換えられます。
- あなたの商品は「目的が達成された瞬間に手放される」設計になっていないか。達成した先のお客様に出せる価値は何か
- 継続の理由を、新しいプランや値上げではなく「同じ値段の中身を濃くする」形で作れないか
- 新しく作る前に、いまある資産(記事・データ・道具・人脈)を「つなぐ」だけで届くものは無いか
