組織化とは

1人での経営には、はっきりした上限があります。売上は「自分が働ける時間」に比例し、自分が病気やけがで動けなくなれば、事業も止まってしまいます。

  • 売上の上限 ─ 自分の働ける時間以上には伸びない
  • 品質の限界 ─ 忙しくなるほど、1つ1つの仕事の質が下がる
  • 事業が止まるおそれ ─ 自分に何かあれば事業が止まる
  • 新しい挑戦ができない ─ 日々の仕事に追われ、企画や営業に時間を割けない

組織化の目的は、単に人手を増やすことではありません。「自分にしかできない仕事」に自分の時間を集中させ、それ以外の仕事を任せられる状態を作ることです。経営者の仕事は、作業をこなすことから、仕組みを作ることへと変わっていきます。

最初の1人を雇うまでの流れ

このサイトで共通の例にしている〇〇整体院(〇〇駅の近くで、仕事帰りの会社員向けに平日21時まで開いている整体院)で考えます。院長1人で開業し、2年目の後半に受付のパートを1人雇うまでの流れは、次のとおりです(架空の例)。

最初の1人を雇うまで(〇〇整体院の例)
  1. 仕事を書き出して分ける

    施術は院長、受付と会計は任せる

  2. 3つの条件を確かめる

    書き出せるか、続くか、払えるか

  3. 手順書を作って募集する

    受付と会計の流れを1枚に

  4. 雇って、育てる

    2年目の後半に、受付のパートを1人

院長は、自分にしかできない施術に時間を使えるようになります

仕事を書き出して、任せる仕事を分ける

採用の前にやるべきことが、仕事の書き出しです。「自分の頭の中にしかないやり方」のままでは、誰かに任せることができません。

  1. 自分の仕事をすべて書き出す
  2. 「自分にしかできない仕事」と「任せられる仕事」に分ける

〇〇整体院なら、施術と姿勢の指導は院長に残し、受付と会計、予約の確認の連絡、タオルの洗濯などを任せます。店のない仕事なら、見積書や請求書の作成、打ち合わせの日程の調整、データの入力などが、任せやすい仕事です。

分けるときは、「人を増やす前に、ITで減らせる仕事はないか?」も考えます。これが、小さな会社の人事戦略の基本です。〇〇整体院も、開業4か月目にネット予約を始めて、予約の電話を減らしました。

雇うタイミングを確かめる(3つの条件)

「忙しくなったら雇う」という感覚だけで採用すると、人件費が経営を圧迫します。次の3つがそろっているかを確かめてから決めましょう。

  1. 任せたい仕事を具体的に書き出せる
  2. その仕事が、これからも続けて発生する見込みがある(一時的に忙しいだけなら、外注〔外の会社や人に頼むこと〕で対応する)
  3. 売上と利益の見通しから、毎月の人件費(給与+社会保険料など)を払い続けられる

雇うと決める前に、使える助成金も調べます。助成金は、雇用保険の適用事業所であることが前提で、多くは取り組む前に計画を出す必要があり、支給は後払いです。雇ってからでは申請できないものが多いので、「助成金を活用する」で先に確かめましょう。

手順書を作って、募集する

雇うと決めたら、任せる仕事の手順を、マニュアル(手順書)やチェックリストにします。紙ではなく、動画や共有ドキュメント(パソコンやスマホで一緒に見られる文書)にしておけば、更新も引き継ぎも簡単です。〇〇整体院は、いちばん回数の多い受付と会計(来院から会計、次の予約まで)から手順書にしました。

募集では、大企業と同じやり方では勝てません。給与や知名度で選ばれない分、次の点を意識します。

  • 求人票(募集の案内)に「任せたい仕事」を具体的に書く(手順書がここで活きる)
  • 経営理念(会社が大事にする考え)やビジョン(目指す姿)を伝え、仕事の意義に共感してくれる人を探す
  • スキルより人柄・価値観の一致を重視する(スキルは育成できるが、価値観は変えられない)
  • ハローワーク・地元の学校・知人の紹介など、費用のかからない経路から始める

〇〇整体院は、人事理念(どんな人と働き、どう育てるかの考え)に「お客さんの話を、最後まで聞ける人と働く」を掲げ、求人票にも書きます。理念がまだ言葉になっていない場合は、先に「経営戦略を策定する」で整理しておきましょう。

人を雇うときは、働く条件をはっきり示すこと(労働条件の明示)や、労働保険・社会保険の手続きなど、守るべきルールがあります。厚生労働省の「人を雇うときのルール(新しいタブで開きます)」で確かめ、わからない所は労働基準監督署やハローワーク、社会保険労務士に相談しましょう。

育てて、評価する

雇って終わりではなく、育てて定着してもらうまでが人事戦略です。最初から立派な人事制度は要りませんが、次の3つは早い段階で用意しましょう。

  • 仕事の教え方 ─ 手順書をもとに教え、できたことを記録する
  • 評価の基準 ─ 何ができるようになったら給与が上がるのかを示す
  • 話す機会 ─ 月に1度は、仕事以外の困りごとを聞く時間を作る

〇〇整体院なら、「手順書どおりに受付と会計ができる」「予約の確認やタオルの準備まで1人で回せる」のように段階を決め、できるようになったら給与を上げると伝えます。人事理念の「受付でも、料金と施術の流れを同じように伝えられるよう、院長が教える」も、手順書で教える理由です。

小さな会社では、1人の退職が事業に大きく影響します。「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる環境づくりは、採用よりも重要な投資です。

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