事業計画書とは

事業計画書が要るのは、主に3つの場面です。融資の審査(日本政策金融公庫や銀行が、返済できるかを判断する)、補助金の申請(採択〔補助金を出す事業に選ぶこと〕が決まる)、そして自分の羅針盤(迷ったときの判断の基準)です。

審査する人が知りたいのは、「なぜこの事業で売上が立つのか」という根拠のつながりです。顧客のニーズ → 競合の弱み → 自社の強み → 売上の根拠、という筋道が1本の線でつながっていれば、審査する人に納得してもらいやすくなります。

このサイトで共通の例にしている「開業1年目の〇〇整体院」(〇〇駅の近くで、仕事帰りの会社員向けに平日21時まで開いている、院長1人の整体院)なら、筋道は次のようになります。

審査する人に伝わる筋道(〇〇整体院の例)
  1. 顧客のニーズ

    仕事帰りに通える整体がない

  2. 競合の弱み

    駅の近くの整体院は19時に閉まる

  3. 自社の強み

    平日21時まで。毎回同じ院長が見る

  4. 売上の根拠

    1日の人数 × 料金 × 営業日数で積み上げる

どの数字にも、「なぜ?」と聞かれて答えられる計画になります

19時に閉まる競合と、21時まで開く自社の差が、売上の根拠です。顧客、競合、自社の比べ方は「3C分析」で説明しています。

事業計画書に書くこと

様式は出す先によって違いますが(日本政策金融公庫の創業計画書、補助金の事業計画書など)、書く中身はおおむね共通しています。

事業計画書に書くこと
項目 書くこと
創業の動機・経歴 なぜ始めるのか。事業にかかわる経験やスキル
事業内容 誰に・何を・どのように提供するのか
市場・競合の分析 顧客のニーズ、市場の大きさ、競合の様子と自社の強み
販売戦略 どうやって知ってもらい、売るのか
数値計画 売上計画と損益計画。数字の根拠がいちばん大事
資金計画 必要なお金と集め方、資金繰り(お金の出入りのやりくり)の見通し

前半は言葉で語るパート、後半は数字で語るパートです。日本政策金融公庫の「創業計画の書き方(新しいタブで開きます)」では、創業計画書の様式と、書き方の動画が公開されています。

言葉のパートの書き方

言葉で語るパートは、ほかの記事で分析した結果を集めて書きます。分析が済んでいれば、大部分はもうできています。

結果を貼り付けず、筋道の順に1つの話としてつなげます。〇〇整体院なら、創業の動機は「隣の市の整体院で10年勤めた。その店は19時に閉まり、仕事帰りの会社員から『夜もやっている所はないか』と何度も聞かれた」と書きます。

数字のパートの作り方(3つの計画)

売上 → 損益 → 資金繰りの順に、〇〇整体院の院長が開業の前に作った計画で説明します(架空の例。税金、減価償却、借入の利息は省いています)。

開業前の整体院の施術室で、院長が机に向かい、ペンを持って計画を書いている。机の上には、棒グラフの形が描かれたノートと電卓とノートパソコン。後ろに施術ベッドと青緑の扉がある
開業の前に、数字の計画を立てる院長(架空の例)
  1. 売上計画: 客数と単価を、下から積み上げる

    「市場が100億円だから、1%取れれば1億円」のような上からの逆算は、審査では評価されません。下から積み上げるのが基本です。売上は、業種に合わせて次のような式に分けます。

    • 店に来てもらう商売: 客数 × 客単価(1人が払う金額)× 営業日数(客数は、席やベッドの数 × 1日に回せる回数からも考えられる)
    • 会社に売る商売(B2B): 顧客数 × 顧客単価(月額 × 12か月など)
    • ネット通販: アクセス数 × 購入率 × 客単価

    式の数字には、立地、競合の様子、自分の経験などの裏付けを付けます。売上は開業した月から満額にはならないので、1年目は控えめに見込みます。

    〇〇整体院の式は「6,000円(1回60分)× 1日のお客さん × 24日」です。料金は、もみほぐしの店(60分で5,000円ほど)より高い分、姿勢から見直し、家でできる体操も教えます。1日のお客さんは、院長が10年勤めた店での経験と、開業の前に平日の夜だけ部屋を借りて試した結果(4週間で12人が受け、4人が次も予約した。事業計画づくり実践講座 第6回)をもとに、まだ知られていない1〜3か月目は2人、4〜6か月目は3人、7か月目からは4人と、控えめに見込みました(売上は下の表)。

  2. 損益計画: 費用を引いて、毎月いくら残るかを見る

    「売上 − 費用 = 利益」を、月ごとに見積もります。費用は、売上に比例して増える変動費(仕入れ、カードの手数料など)と、売上が0でも出ていく固定費(家賃、人件費など)に分けます。人を雇うなら、社会保険料の会社が払う分まで入れます。自分の生活費も、費用と同じように引いて確かめます(会社なら自分の給料〔役員報酬〕として費用になります。個人の事業では帳簿の上の費用になりませんが、暮らしていけるかを確かめるために入れます)。

    〇〇整体院は、開業資金360万円のうち240万円を日本政策金融公庫から借り、5年で返す計画です(元金の返済は月4万円)。そこで表には、返済と、手元のお金の増減の行も足しています。

    記入例: 〇〇整体院の損益と手元のお金(1か月。単位は万円)
    1〜3か月目 4〜6か月目 7か月目から
    売上 28.8 43.2 57.6
    変動費(売上の5%) 1.4 2.2 2.9
    固定費 17 17 17
    院長の生活費 25 25 25
    利益(生活費を引いたあと) −14.6 −1.0 12.7
    融資の返済(元金) 4 4 4
    手元のお金の増減 −18.6 −5.0 +8.7

    固定費は、家賃10万円、広告3万円、水道光熱費と通信費2万円、そのほか2万円。変動費は、タオルやオイルなどの消耗品と、カードの手数料です。この表で、次の2つを確かめます。

    • 損益分岐点(利益がちょうど0になる売上): 固定費と生活費の42万円を、1人あたりに残るお金(6,000円 − 変動費 = 5,700円)で割ると、月に約74人(売上で約44万円)。1日3人を少し超えるくらいです
    • 返済できるか: 返済は利益から払います。7か月目からは、利益12.7万円が返済の4万円を上回ります
  3. 資金繰り計画: 手元のお金が尽きる月がないかを確かめる

    利益が出ていても、手元の現金が尽きれば、会社は倒れます(黒字倒産)。利益と現金がずれる主な原因は次の4つです。

    • 売掛金(あとで受け取る約束の代金): 入金まで1〜2か月かかる(特に会社に売る事業)
    • 補助金・助成金: 原則は後払い。先に自分で払う
    • 設備投資: 支払いは一度でも、費用は使える年数に分けて少しずつ計算する(減価償却)
    • 借入の返済(元金): 費用にはならないが、現金は毎月出ていく

    月ごとに「月初めの現金 + 入金 − 出金 = 月末の現金」を並べた表(資金繰り表)を作り、現金がマイナスに近づく月がないかを確かめます。

    〇〇整体院は、開業資金のうち150万円を、運転資金(毎月の支払いにあてるお金)として手元に残しました。上の表のいちばん下の行のとおり、1〜3か月目は月18.6万円ずつ、4〜6か月目は月5.0万円ずつ減るので、6か月目の終わりには約79万円(150 − 55.8 − 15.0)になりますが、尽きません。減るのは主に、院長の生活費を売上でまかないきれないためで、不足の合計(約71万円)は、自己資金の120万円で出せる範囲に収めています。7か月目からは、毎月8.7万円ずつ増えます。

    この例では簡単にするため、損益の表に返済の行を足して、手元のお金の増減を見ています。売掛金などで入金が遅れる事業は、入金と支払いの月に合わせた資金繰り表を作ります。

    お金が細る月が見えたら、その分を創業融資などで先に確保しておきます。現金が足りなくなってからでは、融資は受けにくくなります。

著者の実例: 審査員に伝わった筋道

ここからは、会社に売る事業(B2B)で起業した著者の実例です。上の図と同じ筋道で、事業計画書を書いています。

創業時に作成した事業計画書の実例(事業の名称から地域経済への効果まで、10項目)を読む

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