PEST分析とは
政治・経済・社会・技術の4つの英語の頭文字をとって、PEST(ペスト)と呼びます。
政治Politics
法律、税、補助金、まちづくりなどの決まり
経済Economy
景気、物の値段、給料、金利など、お金の流れ
社会Society
人口、暮らし方、働き方、考え方の変化
技術Technology
スマホ、AI、新しい道具や仕組み
4つとも、自社の努力では変えられない世の中の流れです。それでも早く気づけば、自社に有利な変化(追い風。機会ともいいます)には早めに乗り、不利な変化(向かい風。脅威ともいいます)には備えられます。
顧客や競合など、身近な相手の動きは「3C分析」で、業界の中の力関係は「ファイブフォース分析」で見ます。PEST分析は、その外側にある世の中の流れを見て、「SWOT分析」で作戦を決めるための材料を集める方法です。
PEST分析のやり方(4つの手順)
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見る範囲を決める
世の中の出来事をすべて拾おうとすると、きりがありません。先に、どの地域と、どの業界の変化を見るかを決めます。店で営業する事業なら、お客さんが来てくれる範囲(商圏)と、自分の業界です。ネットで全国に売る事業なら、地域は全国です。
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4つの見方で、変化を書き出す
政治・経済・社会・技術の見方ごとに、自社に関係しそうな変化を1〜3個ずつ書きます。数がそろわなくても、どの見方に入るか迷っても構いません。4つの見方は、変化を見落とさないための道具です。
手がかりは、ニュース、国の白書(分野ごとに今の様子をまとめた報告書)や統計、市のホームページや広報誌、業界の団体のお知らせです。店のまわりを歩いて見ることや、お客さんの話も役に立ちます。最初は細かく調べず、ざっくり集めれば十分です。
書くときは、すでに起きている事実と、「〇〇かもしれない」という見通しを分けます。思い込みや希望を事実のように書くと、判断を誤ります。
4つの見方で、自分に問いかけること
- 政治
- 業界の決まりや税、補助金は変わりそうか。市は、店のまわりに何を作ろうとしているか
- 経済
- 物の値段や給料、金利の動きで、お客さんのお金の使い方や、自社の費用はどう変わるか
- 社会
- まわりに住む人や働く人は増えているか。暮らし方や働き方は、どう変わっているか
- 技術
- お客さんが店を探す道具や、買い方はどう変わっているか。仕事に使える新しい道具や、自社の商品の代わりになるものはあるか
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自社にとって、追い風か向かい風かを決める
書き出した変化の1つずつに、「追い風」か「向かい風」かを書き添えます。世の中にとって良いか悪いかではなく、自社にとってどうかで決めます。同じ変化が、追い風と向かい風の両方になることもあります。
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影響の大きいものを、SWOT分析に移す
自社への影響が大きいものを、追い風と向かい風から2〜3個ずつ選び、SWOT分析の「機会(追い風)」と「脅威(向かい風)」の欄に書きます。似た変化は1つにまとめます。そのあと SWOT分析で強み・弱みと掛け合わせ、取るべき一手を決めます。
世の中は変わり続けるので、半年に1回など、時期を決めて書き直します。
記入例: 開業1年目の整体院
〇〇駅(東口)から歩いて3分、院長1人の整体院です(「3C分析」と「SWOT分析」の記入例と同じ店)。顧客は、仕事帰りに通える整体を探す会社員の佐藤さんです。見る範囲は、駅の周りと、整体やもみほぐしの業界にしました。
政治Politics
- 追い風: 市の再開発で、東口にオフィスビルが増えた
- 向かい風: 同じ再開発で、新しいビルに大手の整体のチェーン店が入るかもしれない
経済Economy
- 向かい風: 物の値段が上がって節約する人が増えれば、安い店が選ばれやすくなるかもしれない
社会Society
- 追い風: 駅の周りで働く会社員が増え、仕事帰りの19時すぎにも駅を通る人が多い
技術Technology
- 追い風: 夜にスマホの地図アプリで店を探し、口コミを見て予約する人が多い
「かもしれない」で終わるものは見通し、ほかは駅の周りで起きている事実です。架空の例です(人物は仮名。〇〇駅には実際の駅名が入ります)。
大手のチェーン店は競合ですが、市の再開発(まちづくり)から出てくる見通しなので、政治の欄に書きました。再開発は、手順3の「両方になる」変化です。
もみほぐしのチェーン店と、SWOTの追い風の「駅の近くの整体院は19時に閉まり、夜に通える店がない」は、世の中の変化ではなく、3C分析や店のまわりで調べた競合の様子です。SWOTには、PEST分析で見つけた世の中の変化と、競合の動きの両方を書きます。
著者の実例: 起業を志したときのPEST分析
ここからは、著者が会社に売る自分の事業(B2B)で、まわりの変化をPESTの見方で考えた実例です。文中の「マクロ環境」は、PEST分析で見る世の中全体の流れ、「IT投資」は仕事のためのシステムにお金をかけること、「クラウド」は、自社でサーバー(システムを動かすコンピューター)を持たず、インターネットを通じて借りて使う仕組みです。
私が起業を志したときにも、身のまわりのマクロ環境の変化が事業構想の後押しになりました。ここでは、当時感じていた外部環境の変化を、PEST分析の視点で振り返ってみます。
社会:中小・零細企業のIT投資格差
システム会社に勤めていた頃、私は大企業と中小・零細企業との間にあるIT投資の大きな格差を目の当たりにしていました。大企業が多額の費用をかけて業務システムを導入する一方で、中小・零細企業は資金や人材の制約から、便利なシステムをなかなか導入できずにいました。ここに、安価で使いやすいシステムへの潜在的なニーズがあると感じました。
政治:DX推進やIT導入を支援する制度
国や自治体が中小企業のDX(デジタル化)を後押しし、IT導入を支援する補助金制度などが整えられていく流れがありました。こうした政策の追い風は、これまでIT投資に慎重だった中小・零細企業が、システム導入に踏み出しやすくなる環境が整いつつあることを意味していました。
技術:クラウド技術の普及
インターネットやクラウド技術の普及により、高価なサーバーを自社で持たなくても、Webシステムを低コストで提供できる環境が整ってきました。この技術的な変化は、資金の限られた中小・零細企業にも手の届く価格でサービスを届けられる、大きな機会だと考えました。
これらの社会・政治・技術の変化を「機会」として捉え、私は中小・零細企業でも導入しやすい、安価な通販管理システムの事業を構想するに至りました。マクロ環境の追い風を読み取ることが、事業の方向性を定める最初の一歩になったのです。
