3C分析とは
3C分析は、事業の作戦を考えるときに、次の3つを並べて見る方法です。3つとも英語の頭文字が C なので、3C と呼びます。
- 顧客(Customer)
- 誰が、どんな場面で困っていて、何を求めているか
- 競合(Competitor)
- 顧客がいま、どこで(何で)その悩みを解決しているか。顧客が比べている相手
- 自社(Company)
- 顧客が求めることに対して、自社には何ができて、何ができないか
3つを重ねると、次の図のようになります。
顧客が求めることCustomer
自社ができることCompany
競合ができることCompetitor
勝てる
値下げ
得意でも
重なり方によって、意味が変わります。
- 顧客が求めていて、自社ができて、競合はできていない: 勝てるすきまです。ここで勝負します
- 顧客が求めていて、競合も自社もできる: 顧客に比べられ、値下げ合戦になりやすい場所です
- 自社はできるが、顧客は求めていない: 得意なことでも、売れません
3C分析のやり方(4つの手順)
顧客 → 競合 → 自社の順に書き出し、最後にすきまを1文にまとめます。自社から考え始めると、自分の得意なことに引っ張られて、顧客が求めていないことまで強みだと思い込みやすいからです。
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顧客: ペルソナ1人の困りごとと、お客さんがいる範囲を書く
まず、ペルソナ(顧客1人の具体的な人物像)を置きます。書くのは次の3つです。
- 困っている場面(いつ、どこで、何に困っているか)
- 本当に求めていること
- 店や商品を選ぶときに気にすること(口コミ、料金など)
あわせて、その人がいま、どうやって悩みをしのいでいるかも確かめておきます。これは次の手順で、「競合」の欄に書きます。
ペルソナをまだ描いていなければ、先に「ペルソナの作り方」で1人を描きましょう。会社に売る事業(B2B)なら、「どんな会社か」と「その会社が何に困っているか」の2段で考えます。後半の「著者の実例」が、その例です。
最後に、商圏(お客さんが来てくれる範囲)を決め、そこに顧客が十分いそうかを、市区町村の統計(「〇〇市 統計」で検索)や、国の「地図で見る統計(jSTAT MAP)」で、ざっくり確かめます。
商圏の決め方と、統計でわかること
ネットで全国に売る事業なら、商圏は全国です。地域で営業する事業は、起業したばかりのうちは範囲を広げすぎず、できるだけ絞りましょう。ただし、絞りすぎると顧客が足りなくなります。「広すぎず、狭すぎず」が目安です。
統計で「肩こりに悩む人の数」まではわかりませんが、年齢ごとの人口や、その地域で働く人の数などはわかります。ざっくりとした目安で十分です。市区町村のホームページには、人口や世帯数などのデータが載っています(たとえば「福岡市東区の統計」で検索します)。「地図で見る統計(jSTAT MAP)」は、国の統計の窓口 e-Stat にあり、地図を見ながら地域の統計を調べられます。
顧客を「似た人の集まり」に分ける、4つの切り口
似た人が、どれくらい、どこにいるかを考えるときは、次の4つの切り口で顧客を分けます(分けた集まりを「セグメント」といいます)。最初から切り口で分けると、1人の顧客の顔が見えなくなるので、ペルソナを描いたあとで使いましょう。
- 人の属性(デモグラフィック)
- 年齢、性別、職業、家族構成、収入など。例: 40代の子育て世代の女性
- 心の特徴(サイコグラフィック)
- 価値観、好み、ライフスタイルなど。例: 値段より質を大事にする
- 地域(ジオグラフィック)
- 住んでいる地域、都会か地方か、気候など。例: 地方に住み、移動は車が中心
- 行動(ビヘイビアル)
- いつ、どこで、どのくらいの頻度で買うかなど。例: ネットで月に1回、定期的に買う
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競合: 顧客が比べている相手を探す
競合は、自分が「ライバルだ」と思っている会社とは限りません。顧客が比べている相手が競合です。
顧客の目線で探すには、次の順に調べます。
- ペルソナが検索しそうな言葉で、実際に Google で検索する(整体院なら「〇〇駅 整体 20時以降」のように、顧客が困っている場面で入れそうな言葉です)
- 検索結果の上位と、地図(Google マップ)に出てくる会社を書き出す
- 商圏の中の店、チラシ、SNS など、ネットの外の接点も確かめる
- 自社と顧客が重なる会社を、「直接の競合」として絞り込む
検索の上位に出てくる会社は、自社がほしい顧客を、すでに多く集めている可能性が高い会社です。
同じ悩みを別のやり方で解決しているものも、競合に入れます。手順1で確かめた「いま、どうやってしのいでいるか」です。整体院なら、もみほぐしの店や整形外科のほか、市販の湿布も競合です。
競合が見つかったら、ホームページ、チラシ、Google の口コミ、SNS を見て、次の点を書き出します。
- 顧客は、なぜその競合を選んでいるか
- 競合の商品やサービスの強みと弱み
- 口コミで、ほめられていることと、不満が出ていること
- お客さんの集め方と、予約や注文の受け方(ホームページ、チラシ、電話だけ、など)
- 競合が手を出していないこと(時間帯、地域、サービスの中身)
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自社: 顧客が求めることに照らして、強みと弱みを書く
顧客と競合を書き出したら、自社を見ます。書くのは、顧客が求めることに関係する強みと弱みだけです。「丁寧」「安心」のように、どの会社でも言えることは強みになりません。
- 顧客が求めることのうち、競合より上手にできることは何か(強み)
- 競合より劣っていることは何か(弱み)
- いまは弱みでも、解決すれば強みに変わることはないか
- 顧客が自社を選ぶ理由は何か(開業前なら、選んでもらえそうな理由)
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すきまを1文で書き、勝つための鍵(KSF)を決める
3つを並べたら、すきまを次の形の1文にまとめます。
「(誰)の(どんな困りごと)を、(競合にはない自社の強み)で解決する」
最後に、そのすきまで勝つために、必ずやり遂げることを決めます。これを KSF(Key Success Factor:重要成功要因)と呼びます。KSF は、次の2つから考えます。
- すきまを生む自社の強みを、出し続けるために要ること
- その強みが顧客に届かない原因(自社の弱み)を補うこと
事業によっては、新しいサービスの開発や、人の教育、設備のための資金調達が KSF になることもあります。KSF を達成できないと、事業計画はうまく進みません。
記入例: 開業1年目の整体院
「ペルソナの作り方」で描いた、開業1年目の整体院の例です。顧客には、そこで描いた佐藤さんを置きます。
記入例「ペルソナの作り方」で描いた顧客
肩こりで眠れず、仕事帰りに通える整体を探す会社員
佐藤 美穂さん(仮名)・38歳
顧客Customer
- 人物: デスクワークの肩こりで、夜に眠れない会社員
- 場面: 仕事帰りの20時以降に通いたいが、駅の近くの整体は閉まっている
- 求めること: 休日をつぶさずに体を整え、朝までぐっすり眠りたい
- 選ぶとき: 口コミと料金を見て、納得してから予約する。強い勧誘は苦手
- 商圏: 〇〇駅から電車で2〜3駅。市の統計で、働く世代が多い地域だと確かめた
競合Competitor
- 駅の近くの整体院: 19時に閉まり、仕事帰りに間に合わない。予約は電話だけ
- もみほぐしの店: 休日に通っている。料金は手ごろだが、すぐ元に戻る
- 整形外科: 保険が使えるが、診察は夕方まで。「異常なし」と言われた
- 市販の湿布: 手軽だが、その場しのぎ
自社Company
- 強み: 院長1人なので、毎回同じ人が担当する
- 強み: 仕事中の姿勢から見直し、家でできる体操も教える
- 強み: 予約制で、平日は21時まで受けられる
- 弱み: 開業1年目で、まだ知られていない
- 弱み: 1人なので、1日に受けられる人数が少ない
勝てるすきま
デスクワークの会社員の「仕事帰りに通える整体がない」という困りごとを、20時以降も予約でき、毎回同じ院長が姿勢から見直す施術で解決する
競合の欄を見ると、仕事帰りに間に合う店がなく、休日に通える店も、肩こりの原因までは見てくれません。一方、この整体院は院長1人の予約制なので、遅い時間も受けられ、毎回同じ人が姿勢から見直せます。この重なりが、この整体院のすきまです。
KSF は、手順4のとおり2つから考えます。強みの「毎回同じ院長が見る」を、佐藤さんが実感できるようにすること。そして、弱みの「まだ知られていない」を補い、佐藤さんが店を探して予約するまでの動きに合わせることです。この整体院の KSF は、次の3つです。
- 施術の記録を残し、毎回、前回の続きから見る(強みを出し続ける)
- 夜中でも、スマホで予約が取れるようにする(佐藤さんは、帰りの電車や、肩こりで眠れない夜に、スマホで店を探すため。近くの整体院の予約は電話だけ)
- Google の口コミと、料金と施術の流れを載せ、「〇〇駅 整体 20時以降」のような言葉で見つけてもらえるようにする(初めての店は、口コミと料金を見て、納得してから予約するため)。やり方は「Googleビジネスプロフィールに登録する」と「ペルソナから検索語と AI への質問を作る」で説明しています
架空の例です(人物は仮名。〇〇駅には実際の駅名が入ります)。
著者の実例: 起業したときの3C分析
ここからは、著者が起業したときの実例です。整体院のように個人のお客さんに売る事業を B2C、著者のように会社に売る事業を B2B と呼びます。会社に売る事業では、顧客を「どんな会社か」と「その会社が何に困っているか」の2段で整理します。文中の「セグメント化」は、顧客を同じ特徴ごとにグループに分けることです。
私の場合はB2Bビジネスで起業しましたので、上記のB2Cビジネスとはやり方が異なります。3つのCの観点で顧客 → 競合 → 自社の順番で分析する流れは同じです。
私の起業の経緯は以下の通りです。
- システム会社に勤務し、大企業の下請けで業務効率化を推進するシステムの開発を行っていた。
- 大企業と中小・零細企業のIT投資に対する格差を目の当たりにした。
- 中小・零細企業に安価で便利なシステムを提供したいと考えるようになった。
- 中小・零細企業の売上アップと業務効率化を同時に実現するECシステムを企画・開発しようと起業に至った。
顧客の分析
B2Cの場合では、年齢・性別・職業・家族構成などの顧客属性をセグメント化しますが、B2Bの場合ではそれを法人に置き換えます。例えば、創業年数・業種・営業形態・売上規模・従業員数などが該当します。私の場合は、以下のような顧客属性を設定しました。
顧客の属性
| 所在地 | 鹿児島県内の企業 |
|---|---|
| 業種 | 食品製造業 |
| 営業形態 | 通販(電話・FAX・ネット)で全国の消費者に直販 |
| 創業年数 | 10年以上 |
| 売上規模 | 1億~10億円 |
| 従業員数 | 50人以下 |
顧客の現状
- 創業時から鹿児島の特産品を製造・販売している。
- 10年程前より通販で全国の消費者に販売しており、現在は売上に占める通販の割合が8割を超えるようになった。
- 3年前よりECサイトも開設し、ネット通販と電話・FAX注文を受け付けている。
- ネット注文はECサイトのシステムを利用しているが、電話・FAX注文は毎回手書きの伝票に注文内容を書き起こしている。
- 特に電話注文は、電話受付時のメモ→注文伝票→運送伝票と転記が多いため、注文が殺到すると仕事量が増え、転記ミスも多発している。
- 繁忙期はネットと電話注文が殺到し、夜中まで注文処理に追われることがある。
競合の分析
大企業のように多額の費用をかけて自社専用の通販システムを開発する例は除外し、中小・零細企業が現実的に導入可能な競合に絞り分析を行いました。分析を行うと、ECサービス、ECソフト、直販ソフトの大きく3つの競合に分類されました。
| A社 | B社 | C社 | |
|---|---|---|---|
| システム形態 | ECサービス | ECソフト | 直販ソフト |
| 営業形態 | インターネット | 地場の制作会社 | 全国に支店 |
| 初期費用 | 0~10万円 | 50~300万円 | 数百万円 |
| 月額費用 | 数千円 | 数千~数万円 | 不明 |
| ネット注文 | ○ | ○ | × |
| 電話・FAX注文 | × | × | ○ |
上記比較表でも分かる通り、ネット注文と電話・FAX注文両方に対応したシステムは、安価では存在しませんでした。顧客のニーズはネット・電話・FAX注文を一元管理するシステムです。しかし、システム会社は開発に多額の費用がかかる事や、製品を売りやすいように専門システムにするケースが多く、ここに競合の弱みがありました。
自社の分析
上記の顧客ニーズや競合分析結果を踏まえたうえで、自社の強みや弱みを分析しました。
自社の強み
- 大手企業の基幹業務システム開発経験がある
- 集計やシステム間連携を伴う複雑な業務システムを開発できる
- WebサイトやWebシステムの開発経験があり、ECサイトを開発できる
- 後発なので、最初からネット注文と電話・FAX注文を統合する想定で開発できる
自社の弱み
- 創業したばかりで会社の知名度と営業力がない
これらの強み・弱みを分析し、立案した事業戦略が以下になります。
