なぜなぜ分析とは

トヨタ自動車の大野耐一さんが、著書『トヨタ生産方式』で紹介した考え方です。形にすると、問題から下へ「なぜ?」をたどる、1本の鎖になります。

なぜなぜ分析の形
  1. 問題いま困っていること(できれば数字で)

  2. なぜ?その問題が起きている原因

  3. なぜ?その原因が起きている原因(これを3〜5回ほど繰り返す)

  4. 根っこの原因ここを取り除けば、同じ問題が起きにくくなる原因

  5. 対策根っこの原因を取り除く手立て

雨漏りのたびにバケツを置くのは、その場しのぎです。屋根の穴をふさがない限り、同じことが起きます。なぜなぜ分析は、この「屋根の穴」にあたる原因を探し、同じ問題をくり返さないようにする(再発防止)方法です。

なぜなぜ分析のやり方(4つの手順)

  1. 問題を、具体的に書く(できれば数字で)

    「なんとなく予約が少ない」では、どこを掘ればよいかが決まりません。何が、いつ、どれくらい起きているかを書きます。何を問題にするか迷うときは、あるべき姿と今の姿の差を書き出す「As-Is/To-Be分析」を先にすると、見つけやすくなります。

  2. 「なぜ?」に、事実で答える

    予約帳、口コミ、お客さんから聞いた話など、確かめられることで答えます。「宣伝が足りない」のようなあいまいな言葉ではなく、「地図アプリに料金が載っていない」のように場面が浮かぶ言葉で書きます。「不注意だった」と人のせいにすると話が止まるので、仕組みで答えます。原因が2つ以上あるときは、それぞれを掘り下げます(同じ根っこに行き着くこともあります)。

  3. 「なぜ?」を繰り返し、根っこの原因で止める

    答えに、また「なぜ?」と問います。5回は目安です。それより先をさかのぼると、自分では手を打てなくなる所で止めます。最後に、根っこの原因から問題へ「だから〜」と逆に読み、無理なくつながるかを確かめます。つながらない所には、別の原因が隠れています。

  4. 根っこの原因に、対策を立てる

    対策は、誰が何をするかがわかる行動か、仕組みで書きます。「気をつける」「意識を高める」は対策になりません。手を打ったら、手順1で書いた数字が変わったかを確かめます。

記入例: 開業1年目の整体院

〇〇駅から歩いて3分、院長1人の整体院です。平日は21時まで開いています(「As-Is/To-Be分析」の記入例と同じ店)。院長は、1年後に平日の夜の予約を週に15人にしたいと考えていますが、今は週に2人ほどです。通ってほしいのは、佐藤さん(38歳、経理事務)のような、仕事帰りに通える整体を探す会社員です。架空の例です(人物は仮名)。

整体院の院長が、四角を矢印で縦につないだ白いボードの前に立ち、ペンを持って考えている。いちばん下の四角だけが青緑で囲まれている
「なぜ?」をたどって、根っこの原因を探る(架空の例)
記入例「平日の夜の予約が少ない」を、なぜなぜ分析で掘り下げる
  1. 問題平日の夜の予約が、週に2人ほどしかない(1年後には週に15人にしたい)

  2. なぜ1なぜ少ない? → 仕事帰りの会社員が、ほとんど予約してこない。今のお客さんは近所の人が中心

  3. なぜ2なぜ会社員が来ない? → 来てくれた会社員のお客さんに聞くと、帰りの電車や夜にスマホで整体を探すという。そこでこの院が選ばれていない

  4. なぜ3なぜ選ばれない? → 原因は2つ。地図アプリの口コミは3件で、検索してもほとんど出てこず、料金と施術の流れも載せていない。予約は電話だけで、電車の中や営業時間の外には予約できない

  5. 根っこの原因なぜ2つとも手つかず? → 営業時間は会社員に合わせたのに、知らせ方と予約の受け方は「近所の人が、営業中に電話で予約する店」の形のままだった

  6. 対策院長が、夜中でもスマホで予約できるようにし、口コミを集め、地図アプリに料金と施術の流れを載せる。平日の夜の予約が週に2人から増えたかで確かめる

逆に読むと、「電話で予約する店の形のまま。だから夜にスマホで探す会社員に見つからず、予約もできない。だから夜の予約が週に2人」と、問題までつながります。

著者の実例: 通販の会社の「受注のミス」を掘り下げる

ここからは、著者が以前、取引先の仕事の問題を掘り下げた実例です。お客さん集めだけでなく、ミスのような仕事の中の問題にも、同じやり方が使えます。文中の「転記」は書き写すこと、「一元化(一元管理)」はばらばらなものを1か所にまとめること、「対症療法」はその場しのぎのことです。

私は鹿児島でWebシステム開発の会社(株式会社SESH)を立ち上げ、中小企業の業務改善に取り組んできました。ここでは、ある通販事業者の「受注のミスが多い」という問題を、なぜなぜ分析で掘り下げた例を紹介します。

まずは問題を具体的に定義します。「なんとなくミスが多い」ではなく、「電話で受けた注文の転記ミスが、繁忙期に繰り返し発生している」と定義しました。この問題に対して、「なぜ?」を繰り返していきます。

記入例「受注のミスが多い」を、なぜなぜ分析で掘り下げる
  1. 問題電話で受けた注文の転記ミスが、繁忙期に繰り返し発生している

  2. なぜ1なぜミスが起きるのか?→ 電話で受けた注文を、手書きの伝票に書き写しているから。

  3. なぜ2なぜ手書きで書き写すのか?→ 電話注文を受け付けるシステムがなく、紙の伝票で処理しているから。

  4. なぜ3なぜ電話注文だけ紙で処理するのか?→ ネット・電話・FAXの注文が、それぞれ別々の方法で管理されているから。

  5. なぜ4なぜ注文経路ごとにバラバラなのか?→ すべての注文を一つにまとめて管理する仕組みがないから。

  6. 根本原因注文経路(ネット・電話・FAX)が一元化されておらず、経路ごとに別々の方法で管理されていること。

  7. 対策すべての注文経路を一つにまとめて管理する仕組み(一元管理システム)をつくること。

「転記ミスが多い」という表面的な問題を、「担当者がもっと注意する」という対症療法で終わらせていたら、繁忙期のたびに同じミスが繰り返されていたはずです。なぜなぜ分析で根本原因までさかのぼったことで、注文経路を一元管理する仕組みという、再発を防ぐ本質的な対策にたどり着くことができました。

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