なぜ解決策より先に「課題」を決めるのか
起業のアイデアは、「こういう商品を作りたい」という解決策の形で浮かぶことがよくあります。しかし、事業が成り立つかどうかを決めるのは、商品の出来ばえより、顧客の困りごとの深さです。顧客が「お金や時間を払ってでも解決したい」と感じていなければ、どれほど丁寧な商品でも選ばれません。
開業1年目の整体院の例で、解決策から考えた文を、顧客の佐藤さん(1日中パソコンに向かう38歳の会社員)の困りごとで言い直してみます。
売り手の文(解決策から考えた)
「最新の機器をそろえた、落ち着いた内装の整体院を開きたい」
見えないこと誰が、どんな場面で、何に困っているのか
商品のこだわりをいったん外し、顧客の困りごとで言い直す
課題の1文(顧客の困りごと)
誰が「1日中パソコンに向かう会社員が、
どんな場面で肩こりで夜に眠れない日に、
何に困っている仕事帰りの20時以降に通える整体がなくて困っている」
見えてくること機器や内装より先に、平日の夜も受け付けることが大切
架空の例です。
解決策から考えると、売り手が作りたいものの説明になり、顧客が本当に困っていることを見落とします。課題の1文から考えれば、顧客の目線で、何から整えるかを選べます。
課題を1文にする型と、書き方の手順
課題は、長い文章で説明するより、短い1文に絞るほうが、輪郭がはっきりします。次の型に当てはめます。
最初から正解を書く必要はありません。これから現場で確かめるための仮の案(たたき台)として、次の3つの手順でまとめます。
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売りたい商品の特徴を、いったん外す
自分が売りたい商品のこだわり(機器、内装、料金など)を、文から外します。こだわりを書くと、売り手の都合の文になります。「整体」のように、顧客がふだん使う言葉で手段を書くのはかまいません。顧客の目の前で起きている出来事を見ます。
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3つの要素を、別々に書き出す
いきなり1文にせず、型の3つを1行ずつ分けて書きます。「誰が」には、年齢や性別より、仕事や暮らしの立場を書くのがこつです。
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1人の場面が浮かぶ1文につなげる
3つをつなげて声に出して読み、1人が困っている場面が浮かぶかを確かめます。困りごとがいくつも混ざっていたら、いちばん痛みが強い1つに絞ります。売り手の専門用語ではなく、顧客がふだん口にする言葉で書きます。
課題の1文の、よくある3つの失敗
整体院の例で、よくある失敗を見てみましょう。
- 商品の説明になっている
- 「最新の機器で、肩こりを根本からほぐしたい」のような文。売り手の思いだけで、顧客の場面がありません。
- 誰が・場面が広すぎる
- 「肩こりに悩む人が、体の不調に困っている」のような文。誰に何を案内すればよいかが決まりません。
- 悩みを詰め込みすぎている
- 「会社員が、肩こり、腰痛、眠れないこと、運動不足に困っている」のような文。いちばん深い1つが見えません。
直すときは、上の図の「課題の1文」のように、1人の具体的な場面に絞ります。
1文にならないときの掘り下げ方
「言葉が浅くなる」「何が本当の困りごとかわからない」と手が止まったら、次の2つのやり方で掘り下げます。
- 「なぜ?」を繰り返す
- 「なぜなぜ分析」とも呼ぶやり方です。表に見えている悩みに「なぜ困るのか」と問いを重ね、根っこの困りごとまでたどります。たとえば「肩がこる」に「なぜ困るの?」と重ねると、「夜中まで眠れない」「休日のもみほぐしでは、すぐ元に戻る」「平日の仕事帰りは、近くの整体が閉まっている」と、場面が見えてきます。
- 今の姿と、ありたい姿を比べる
- 「As-Is / To-Be分析」とも呼ぶやり方です。顧客の今の姿(As-Is)と、ありたい姿(To-Be)を並べて書き、2つの差から課題を取り出します。たとえば、今は「平日は湿布でしのぎ、休日をもみほぐしに使っている」、ありたい姿は「平日の仕事帰りに体を整え、休日は自分の時間に使う」。差は「平日の夜に、体を整えられる場所がない」ことです。
書き出してみよう
1文ができたら、現場で確かめる
机の上で書いた1文は、まだ仮の案です。その困りごとが本当にあるかは、顧客に聞いてみなければわかりません。想定する顧客に近い人に会い、「こういう商品があったら買いますか」と売り込まずに、「その困りごとに、今どう対処しているか」を聞きます。すでに時間やお金をかけて対処していれば、その困りごとは本物です。
