As-Is/To-Be分析とは

To-Be は「こうなりたい」という姿、As-Is は「今どうなっているか」という姿です。整体院の例で、2つと、その差を埋める課題を並べると、次のようになります。

記入例整体院の、今の姿からあるべき姿へ

今の姿As-Is

平日21時まで開いているが、口コミは3件で、まだ知られていない。予約は電話だけ、施術の記録は紙。平日の夜の予約は、週に2人ほど

差を埋める課題(取り組む順)

  1. スマホで予約できるようにする(予約の仕組み)
  2. 口コミを集め、地図アプリに料金と施術の流れを載せる(知名度)
  3. 仕事帰りの会社員に、平日21時まで開いていることを届ける(お客さん)
  4. 施術の記録を残し、すぐ見られるようにする(施術)

あるべき姿(1年後)To-Be

仕事帰りの会社員が、平日の夜に通い続ける院。平日の夜の予約が、週に15人

差を書き出すと、目の前の作業に追われずに、何から手をつけるかが決まります。

あるべき姿は、会社として描く(自分→社員→顧客)

起業のあるべき姿は、「お金持ちになりたい」「家族を幸せにしたい」といった、経営者個人の願いではありません。会社として、将来どうありたいかを描きます。最初から完ぺきには描けないので、次の順に、自分に近いところから外へ広げます。

  1. 自分: どんな会社を作りたいか
  2. 社員: 一緒に働く人に、どう働いてほしいか
  3. 顧客: 顧客に、どんな価値を届けたいか

社員や顧客という外へ向けて描くと、ほかの人にも共感してもらえるあるべき姿になります。1人で始める事業で、まだ社員がいないときは、自分と顧客から描けば十分です(後半の著者の実例は、社員まで描いた例です)。

As-Is/To-Be分析のやり方(4つの手順)

  1. あるべき姿を、具体的に書く

    「もっと良くする」のような言葉では、今との差がぼやけます。何年後に、誰に、何をしている姿かを書き、できれば数字も入れます。

  2. 今の姿を、事実で書く

    「たぶんこれくらいはできている」と希望で書くと、課題を小さく見積もります。予約の数、口コミの数、起きている出来事など、事実で書きます。

  3. 観点ごとに並べ、差を書き出す

    知名度、お客さん、予約などの仕組み、仕事の体制のような観点ごとに、あるべき姿と今の姿を横に並べます。差は、たいてい複数出てくるので、もれなく書き出します。差が生まれる原因がわからないときは、「なぜなぜ分析」で「なぜ?」を繰り返して掘り下げます。

  4. 課題に優先順位をつけ、順に取り組む

    すべてを一度には解けません。効き目の大きさと、取り組みやすさで順番を決め、1つずつ取り組みます。

記入例: 開業1年目の整体院

〇〇駅から歩いて3分の、院長1人の整体院です。平日は21時まで開いていますが、まだ知られていません(「3C分析」の記事と同じ店)。あるべき姿は、1年後に、デスクワークの肩こりに悩む会社員が、仕事帰りに通い続ける院です。

閉店後の小さな整体院で、院長が開いた予約帳を前に立っている。窓の外は夜で、仕事帰りの会社員が歩いている。横に青緑の扉がある
予約帳には空きが多い(今の姿)。窓の外を、通ってほしい仕事帰りの会社員が歩いていく(あるべき姿)(架空の例)
開業1年目の整体院の、あるべき姿と今の姿
観点あるべき姿(1年後)今の姿
知名度「〇〇駅 整体 20時以降」で探す人に、地図アプリで見つけてもらえる。口コミが30件口コミは3件で、検索してもほとんど出てこない
お客さん仕事帰りの会社員が、平日の夜に通い続けている。平日の夜の予約が週に15人近所の人が中心。平日の夜の予約は、週に2人ほど
予約の仕組み夜中でも、スマホで予約できる予約は電話だけで、営業中しか受けられない
施術施術の記録をすぐ見られ、毎回、前回の続きから見られる施術の記録が紙で、前回の内容を探すのに手間がかかる

表の差から、最初の図の4つの課題が出ます。まず、①スマホの予約(予約の仕組み)と、②口コミと地図アプリ(知名度)。仕事帰りの会社員は、帰りの電車でスマホで店を探して予約するので、予約の入り口が整わないと、ほかの課題を解いても来てもらえないからです。入り口が整ったら、③21時まで開いていることの発信(お客さん)と、④施術の記録(施術)に進みます。

著者の実例: 起業したときに描いたあるべき姿

整体院の例は、院長1人の店を、お客さんに関わる観点で表にしました。次は、社員を雇い、会社に売る事業(B2B)の例です。文中の「ストックビジネス」は、毎月続けて使ってもらい、安定した売上が入る仕組み、「ベクトル」は向きのことです。

2008年に起業した際に、実際に描いたあるべき姿を事例として紹介します。前述の「自分→社員→顧客」の順で、段階的に描いていきました。

会社組織に対するあるべき姿

エンジニアとして起業した私は、ITで中小企業の経営課題を解決したいという漠然とした願望を持っていました。起業当時は何もない状態からのスタートで、日々の売上のために下請けの開発をしていました。下請けの現場で、他社の従業員がプレッシャーとストレスで次々と辞めていくのを見ていたことから、会社組織については以下のあるべき姿を描きました。

  • 従業員はものづくりにやりがいを持って安心して仕事をしてほしい
  • スキルの高いエンジニア10名程度で、年収は全員1000万円を目指したい

年収1000万円は、お金のために働く人を集めたいという意味ではなく、高いスキルの対価となる報酬の目安です。問題解決力の高いエンジニアで組織を固め、少ない人数で生産性の高い仕事をしたいという思いから設定しました。あるべき姿は、このように具体的な数字で高い目標を掲げることも重要です。

この理想と現状の差から、次の課題が明確になりました。

  • 安定した収益を上げるストックビジネスを実現する
  • 下請けではなく、自社サービスを開発・提供する

顧客に対するあるべき姿

会社組織に対するあるべき姿から、さらにベクトルを伸ばして顧客に対するあるべき姿を整理しました。大手では巨額のコストをかけて当たり前にシステムが導入されている一方、中小・零細企業ではシステムに投資できるコストや人員が限られ、格差が拡大していくのではと懸念していました。そこで、以下のあるべき姿を描きました。

  • 中小・零細企業に便利で安価なシステムを提供したい
  • 売上アップと業務効率化を同時に実現するシステムを提供したい

あるべき姿と現状の差を埋めるには、以下のような課題がありました。

  • 便利で安価に提供するにはどうするべきか
  • 売上アップと業務効率化を同時に実現するにはどうあるべきか
  • どうやってコストを抑えて営業するか

これらの課題の解決策を導き出すために、次のステップとしてSWOT分析を行い、自社の強みや弱みを整理していきました。

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