第2回の流れ(4枚のシート)
  1. 課題を1文にする

    誰が、どんな場面で、何に困っているか

  2. 困っている場面を描く

    きっかけ、動機、今の対処法

  3. 売り込まずに聞く

    今どうしのいでいるかを記録する

  4. 続けるか直すか決める

    3つの目安で判断する

「続ける」と決めた1文が、第3回(価値の設計)の入口になります

課題を1文にする(シートA)

作りたい商品のアイデアはいったん脇に置き、次の型で、困りごと(課題)を1文にします。

  1. 誰が: 困っている人の立場、仕事、暮らし方
  2. どんな場面で: いつ、どこで、何が起きたときか
  3. 何に困っている: 何に手間、お金、不安を感じているか

まだ正解でなくてかまいません。1文にならないときは、「なぜ困るのか」を繰り返したり、今の姿とありたい姿を比べたりして掘り下げます(「顧客の課題を1文で言う」)。

困っている場面を描く(シートB: 状況ペルソナ)

次に、その困りごとを抱える人を1人思い描き、困っている状況を書きます。ペルソナ(顧客1人の具体的な人物像)のうち、年齢や年収のような属性は書かず、状況だけを書くので、この講座では状況ペルソナと呼びます。属性がわかっても、その人が買うかどうかはわからないからです。書くのは次の4つです。

  • 立場・状況: どんな仕事や暮らしをしていて、ふだんどう過ごしているか
  • きっかけ: いつ、どんな場面で困りごとに出会い、「なんとかしたい」と思うか
  • 動機: 本当に手に入れたいこと(表向きの要望の奥にある本音)
  • 今の対処法: 今どうしのいでいるかと、かけている時間とお金

いちばん大事なのは、今の対処法です。人は、すでに何かで間に合わせているので、困りごとを自分からはなかなか口にしません。その間に合わせのやり方が、聞き取りで掘り下げる手がかりになります。くわしくは「ペルソナの作り方」へ。

売り込まずに、今の対処法を聞く(シートC: 聞き取りの記録)

シートAとBは、まだ頭の中の仮説です。想定した場面にいる人に会って、直接聞いて確かめます。

いちばんやってはいけないのは、「こういう商品があったら買いますか」と聞くことです。人は気をつかって「いいですね」と答えますが、その言葉はほとんどあてになりません。聞くのは、未来の気持ちではなく、今の行動と事実です。

  • 直近でいちばん困ったのは、いつ、どんな場面でしたか
  • そのとき、どうやってしのぎましたか(仕事の困りごとなら、今その作業をどんな手順でやっていますか)
  • それに、どれくらいの時間やお金を使っていますか
  • 今のやり方で、がまんしていること、あきらめていることはありますか

聞いた内容は、4つの質問の答えと、相手のそのままの言葉の5つで、その場でシートCに書き留めます。感想ではなく、回数や金額などの事実を残します。人数は5〜10人が目安ですが、想定した場面に本当にいる知人3人ほどから始めてかまいません。身近にいなければ、前の勤め先や取引先、地域の集まり、同業のつながりから紹介してもらえます。聞き方のこつは「ペルソナを現場で確かめる」にあります。

結果で、続けるか直すかを決める(シートD)

聞き取りが終わったら、記録を見返して、次の3つの目安で正直に判断します。困りごとが浅いのに突き進むと、このあとの価格や需要の検証が、すべて砂の上の設計になります。

続けるか直すかを決める3つの目安
確かめること判断の目安
痛みの強さすでに時間やお金をかけて、自分で対処している → 困りごとは本物
共通性何人もが、同じ場面で同じように困っている → 広がりがある
想定とのずれ本当に困っていたのは、想定と別の人や場面だった → 1文を直す

反応が薄くても、失敗ではありません。お金をかける前に気づけたのは前進です。顧客、場面、困りごとのどれかを変えて1文を書き直し、もう一度確かめます(方向を変えることを、ピボットと呼びます)。

記入例: 開業前の〇〇整体院

記入例は、隣の市の整体院で10年勤めた院長が、〇〇駅の近くに1人で整体院を開こうとしている場合です。第1回の動機(勤め先が19時に閉まり、会社員から「夜もやっている所はないか」と何度も聞かれた)から次の1文を立て、地元の会社で経理事務をしている佐藤さんを思い描きました(架空の例。人物は仮名。ほかの記事では、開業1年目の同じ整体院です)。

記入例の人物のイラスト。肩に手を当てている30代後半の女性

記入例院長が描いた状況ペルソナ

肩こりで眠れず、仕事帰りに通える整体を探す会社員

佐藤 美穂さん(仮名)・38歳

課題の1文(シートA)

1日中パソコンに向かう会社員が肩こりで夜に眠れない日に仕事帰りの20時以降に通える整体がなくて困っている

状況ペルソナ(シートB)

立場・状況
経理事務。月末は1日中パソコンに向かい、会社を出るのは20時ごろ
きっかけ
月末の残業が続いた夜、肩と首が重く、夜中まで眠れない。駅の近くの整体は、もう閉まっている
動機
休日をつぶさずに体を整えて、朝までぐっすり眠りたい
今の対処法
市販の湿布。月に1〜2回、休日にもみほぐしの店へ。整形外科では「異常なし」と言われた
架空の人物による記入例です(名前は仮名)。

院長は、駅の周りの会社に勤める知人に紹介してもらい、佐藤さんのような会社員3人に、仕事帰りに話を聞きました。1人目の記録(シートC)は、次のとおりです。

著者の実例: 会社に売る事業と、このサイトの場合

ここからは著者の実例です。初めの段落は、著者が会社に売る事業(B2B)で起業したときの1文で、「誰が」に会社が入ります。

たとえば私の場合なら「食品を通販で売る小さな会社が/注文が電話・FAX・ネットに分かれる場面で/転記の手間とミスに困っている」となります。こう書けると、次に確かめるべきことが一気にはっきりします。

会社に売る事業では、その作業を実際に担当している人に会い、今の手順と、かけている時間を聞いて確かめます。続く囲みは、このサイトの事業の例です。状況ペルソナを3つの項目にまとめ、聞き取りの代わりに、相談の場で繰り返し聞かれる質問と、検索されている言葉で確かめています。

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