VRIO分析とは

4つの問いの英語の頭文字をとって、VRIO(ブリオ)と呼びます。経営学者のジェイ・バーニーが提唱した方法です。

評価するのは、強みのもとになるもので、これを経営資源と呼びます。人(技術、経験、資格)、もの(場所、設備)、お金、情報(ノウハウ、お客さんや取引先との関係)など、事業に使えるものすべてです。

VRIOの4つの問い

1. 経済価値Value

お客さんに喜ばれ、売上につながるか

2. 希少性Rarity

同じことができる競合は少ないか

3. 模倣困難性Imitability

競合がまねするのに、時間やお金がかかるか

4. 組織Organization

その強みを活かす仕組みや体制があるか

4つの問いは1から順に答え、「いいえ」が出たら、その先は答えません。どこで止まったかで、その強みが競合に対してどれだけ有利か(競争優位)が、5段階で決まります。

VRIO分析の判定表
4つの問いの答えと、強みの力(○ははい、×はいいえ、-は答えなくてよい)
経済価値
(V)
希少性
(R)
模倣困難性
(I)
組織
(O)
強みの力
×---競争劣位
(強みにならない)
○×--競争均衡
(ほかと横並び)
○○×-一時的な競争優位
(しばらくは勝てる)
○○○×未活用
(宝の持ち腐れ)
○○○○持続的な競争優位
(長く勝ち続けられる)

左から順に答え、×が出たら止める

VRIO分析のやり方(3つの手順)

  1. 強みを、具体的に書き出す

    「3C分析」や「SWOT分析」で挙げた強みを使います(なければ、人、もの、お金、情報の4つの経営資源から探します)。「技術力がある」ではなく、「どんな技術で、お客さんの何に応えられるか」まで書きます。

  2. 4つの問いに、順に「はい」か「いいえ」で答える

    自分に甘くならないよう、競合と比べ、お客さんの目線で答えます。

    • 経済価値: お客さんは、それを理由に選んでくれるか(または、自社の費用や手間を減らせるか)
    • 希少性: お客さんが比べている相手(3C分析の競合の欄)のうち、同じことができる所は少ないか
    • 模倣困難性: 少ないお金ですぐできること、やり方を聞けばすぐできることは「いいえ」。いつかはまねされそうでも、今の競合が追いつくのに経験や時間がかかるなら「はい」
    • 組織: その強みを毎回出し、お客さんに伝える仕組みがあるか(1人の事業なら、記録、予約、伝え方などの仕組み)
    まねされにくくなるのは、どんなときか
    • 長い時間をかけて積み上げたもの(信頼、評判、技術)
    • なぜ強いのかが、外から見てもわかりにくいもの
    • 人と人の関係から生まれるもの(社風、取引先との関係)
  3. 判定表に当てはめ、力を注ぐ強みを決める

    力を注ぐのは、4つとも「はい」の強みです。組織だけが「いいえ」なら、仕組みを整えれば「はい」にできるので、これも候補です。すぐまねされる強みは、まねされるまでの間に使います。近くに新しい競合が出たときなどに、見直します。

記入例: 開業1年目の整体院

〇〇駅から歩いて3分、院長1人の整体院です。「3C分析」「SWOT分析」の記入例で挙げた3つの強みを、顧客の佐藤さん(仕事帰りに通える整体を探す会社員)の目線で、4つの問いにかけます。比べる相手は、3C分析の競合と、SWOT分析の向かい風に挙げた大手の整体のチェーンです。

記入例整体院の3つの強みを、VRIOで評価
3つの強みの評価(○ははい、×はいいえ、-は答えなくてよい)。上から、まねされやすい順
強み経済価値希少性模倣困難性組織強みの力
予約制で、平日は21時まで受けられる○○×-一時的な競争優位
(しばらくは勝てる)
仕事中の姿勢から見直し、家でできる体操も教える○○×-一時的な競争優位
(しばらくは勝てる)
毎回同じ院長が担当する○○○×未活用
(宝の持ち腐れ)

左から順に答える

答えの理由は次のとおりです。評価は、架空の店の院長の見立てです(人物は仮名。〇〇駅には実際の駅名が入ります)。

予約制で、平日は21時まで受けられる
会社を出るのが19時半すぎの佐藤さんが通えて(経済価値)、駅の近くの整体院は19時に閉まります(希少性)。ただ、営業時間を延ばすことは、ほかの店もすぐにまねできます。大手のチェーンが夜まで開く店を出すかもしれません(模倣困難性は「いいえ」)。
仕事中の姿勢から見直し、家でできる体操も教える
「もみほぐしでは、すぐ元に戻る」と感じている佐藤さんが選ぶ理由になり(経済価値)、佐藤さんが比べている、もみほぐしの店や湿布にはありません(希少性)。ただ、メニューとしては、ほかの整体院も学べば取り入れられます(模倣困難性は「いいえ」)。まねされにくくなるのは、3つ目の強みと組み合わせたときです。
毎回同じ院長が担当する
佐藤さんは、体の状態を毎回一から話さずにすみます(経済価値)。比べている店で、毎回同じ人が担当すると言える所は少ないと、院長は見ています(希少性)。通ううちに、院長が佐藤さんの姿勢や体のくせを覚えていくので、人の入れ替わりがあるチェーンや、あとから来た店は、すぐには追いつけません(模倣困難性)。ところが、施術の記録は紙で、前回の内容を探すのに手間がかかります。口コミも3件で、この良さがまだ伝わっていません(組織は「いいえ」)。
整体院で、施術台に座った佐藤さんが、院長と同じように肩に手を当てて、家でできる体操をまねている
家でできる体操を、毎回同じ院長が教えます(架空の例)

著者の実例: 創業したときの開発力をVRIOで評価する

ここからは、著者が自分の会社で考えた、会社に売る事業(B2B)の実例です。見出しの「あり」「ある程度あり」は○、「課題あり」は×にあたります。文中の「一元管理」は、ばらばらに届く注文を1か所でまとめて扱うこと、「転記」は別の伝票に書き写すこと、「基幹システム」は、注文やお金など会社の中心の仕事を支えるシステムです。

私は鹿児島で株式会社SESHを創業し、Webシステムの開発を手がけてきました。創業時に事業の柱として考えていた経営資源が、「ネット・電話・FAX注文を一元管理できる通販管理システムの開発力」です。この経営資源を、VRIOの4つの視点で評価してみます。

創業時の経営資源をVRIOで評価する

Value(経済価値):あり

中小・零細の通販事業者は、ネット注文と電話・FAX注文をそれぞれ別々に処理しており、転記の手間やミスに悩んでいました。これらを一元管理できるシステムは、業務の効率化とミスの削減という明確な価値を提供できます。そのため、経済価値はあると判断しました。

Rarity(希少性):あり

当時、安価に導入できるシステムは、ネット注文向けか電話・FAX注文向けのどちらかに偏っていました。両方を手頃な価格で一元管理できるシステムはほとんどなく、希少性はあると判断しました。

Imitability(模倣困難性):ある程度あり

複数の注文経路を統合する業務システムの開発には、大手企業向けの基幹システムを手がけてきた経験と、Webシステムの開発ノウハウの両方が必要でした。この組み合わせは簡単には模倣されにくいものでしたが、資金力のある企業が本格的に参入すれば模倣される可能性もあり、模倣困難性は絶対的なものではないと考えました。

Organization(組織):課題あり

開発力という資源はありましたが、創業直後は知名度も営業力も弱く、その価値を顧客に届ける組織的な仕組みが十分ではありませんでした。ここが最大の課題であり、システムを活かすための集客・営業の体制づくりが必要だと分かりました。

このように評価すると、開発力そのものは価値・希少性・模倣困難性を備えた有望な資源である一方、それを活かす組織(Organization)に課題があることが見えてきます。判定表に当てはめると、この時点では「未活用(宝の持ち腐れ)」の状態にあたります。VRIO分析を通じて、「良い資源を持っているだけでは競争優位にはならない。それを顧客に届ける仕組みづくりが欠かせない」という、創業期の重要な課題に気づくことができました。

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