ペルソナとは
ペルソナは、「この人に買ってほしい」という顧客を、名前や年齢を持つ1人の人物として書き表したものです。年齢や仕事だけでなく、どんな場面で何に困っていて、今どうやってしのいでいるかまで描きます。
事業が続くかどうかを決めるのは、売り手のアイデアより、顧客の困りごとです。まず「誰の、どんな困りごとを解くのか」を決めるために、顧客を1人の人物として思い描きます。
ターゲット(客層)との違い
よく似た言葉に「ターゲット」があります。ターゲットは「30〜40代の会社員」のような客層(似た人の集まり)で、ペルソナはその中の1人です。開業1年目の整体院の例で、市場から1人まで絞ると、次のようになります。
市場(すべての人)
〇〇駅の周りに住む人、働く人
かける言葉「肩こり・腰痛、なんでもご相談ください」
お客さんの反応自分のことだと思わず、素通りする
年齢と仕事で絞る
ターゲット(客層)
30〜40代の、デスクワークの会社員
かける言葉「デスクワークの肩こりに」
お客さんの反応当てはまるが、ほかの店と同じに見える
1人に絞り、困っている場面まで描く
ペルソナ(1人)
佐藤 美穂さん(38歳)
困っている場面デスクワークの肩こりで、夜に眠れない。仕事帰りに通いたいが、駅の近くの整体は19時に閉まる
かける言葉「平日21時まで。仕事帰りに寄れる整体です」
お客さんの反応「私のための店だ」と思う
架空の例です(人物は仮名。〇〇駅には実際の駅名が入ります)。
絞るほど、かける言葉がはっきりします。1人に「私のための店だ」と思ってもらえる言葉は、佐藤さんと同じように困っている周りの人にも届きます。
客層を分ける、4つの切り口
ターゲット(客層)を決めるときは、次の4つの切り口で顧客を分けます(分けた集まりを「セグメント」といいます)。「3C分析」で顧客を考えるときも、同じ切り口を使います。ただし、切り口で分けただけでは、1人の顔は見えません。
- 人の属性(デモグラフィック)
- 年齢、性別、職業、家族構成、収入など。会社に売る事業(B2B)なら、業種や従業員数など
- 心の特徴(サイコグラフィック)
- 価値観、好み、暮らし方など。例: 値段より質を大事にする
- 地域(ジオグラフィック)
- 住んでいる地域、都会か地方か、移動の手段など。例: 電車で通勤し、駅を中心に動く
- 行動(ビヘイビアル)
- いつ、どこで、どのくらいの頻度で買うかなど。例: 仕事帰りの夜に、スマホで予約する
年齢や仕事より、「困っている場面」を描く
ペルソナでよくある失敗が、年齢、性別、年収、趣味などの「属性」を並べて終わることです。同じ「38歳の会社員」でも、置かれている状況によって欲しいものは違います。属性だけでは、何をどう伝えればよいかが決まりません。
そこで、次の4つを描きます。
- 立場と場面: どんな仕事や暮らしの人が、どんな場面で困りごとに出会うか
- きっかけ: 何が起きたときに「なんとかしたい」と動き出すか
- 本当に欲しいもの: 表向きの要望の奥にある、安心や時間などの本音
- 今の対処法: がまん、手作業、ほかのサービスなど、今どうやってしのいでいるか
なかでも「今の対処法」は大切な手がかりです。すでに時間やお金をかけてしのいでいるなら、その悩みは本物です。また、その対処法が、あなたの商品と比べられる相手(競合)になります。佐藤さんなら、休日のもみほぐしの店や市販の湿布が、整体院の競合です。佐藤さんの4つは、最後の「書き出してみよう」に記入例として載せています。
小さな会社が「1人」に絞る3つの理由
広告で多くの人に名前を広める大企業のやり方は、起業したばかりの小さな会社には、お金も人手もかかりすぎます。1人に絞る理由は、3つあります。
1. お金と人手を集められる
誰にでも売ろうとすると、品ぞろえも宣伝の先も広がり、力が分散します。1人に絞れば、その人が見る場所に、時間とお金を集められます。佐藤さんなら、帰りの電車で見る地図アプリの口コミです。
2. 「自分のことだ」と言葉が届く
上の図のとおり、困っている場面に合わせた言葉にして初めて、「私のための店だ」と届きます。その人が検索で入れる言葉や、AI に聞く質問も見つけやすくなります。これが、検索や AI の答えで見つけてもらう対策(SEO・AIO)の土台になります。
3. 商品と売り方を決められる
1人の暮らしのリズムや価値観が見えると、営業時間、価格、予約の方法、サイトに載せる案内まで、迷わず決められます。佐藤さんを顧客にする整体院なら、「平日は21時まで受け付け、スマホで予約できる」と決まります。
ペルソナについての、よくある誤解と答え
誤解1: 1人に絞ると、客が減ってしまうのでは?
1人に絞るのは、ほかの客を断るという意味ではありません。1人に深く届く商品や言葉は、同じように困っている周りの人にも届きます。
誤解2: 理想の顧客を、想像で作ればよい?
売り手に都合のよい人物を頭の中だけで作ると、現実にはいない人になりがちです。今いる顧客や知人から聞いた話、同業の店の口コミなど、実際の声をもとに描きます。
誤解3: 一度作ったら、変えてはいけない?
最初に作るペルソナは、仮の案(たたき台)です。顧客に話を聞いて、違っていれば何度でも書き直します。確かめ方は「ペルソナを現場で確かめる」で説明しています。
