開業のお金の集め方(4つの方法)

起業のときの資金調達(事業に使うお金を集めること)には、大きく分けて4つの方法があります。

方法 返済義務 特徴
自己資金 なし 最も自由に使えるお金。融資審査でも「準備の本気度」として評価される
融資(借入) あり 日本政策金融公庫や銀行などから借りるお金。経営の主導権は自分に残る
出資 なし 投資家などから株式などと引き換えに受け取るお金。経営への関与を受け入れる必要がある
補助金・助成金 なし 国や自治体からの支援。原則は後払いのため、先に支払う資金は必要

小さな会社の起業では、「自己資金+公的な創業融資」を軸に、補助金・助成金を組み合わせるのが現実的な方法です。出資はビジネスの急成長を求められるため、スモールビジネスにはあまり向きません。

このサイトで共通の例にしている「開業1年目の〇〇整体院」(〇〇駅の近くで、仕事帰りの会社員向けに平日21時まで開いている、院長1人の整体院)は、開業に必要なお金を次のように集める計画です。

開業資金の集め方(〇〇整体院の例。架空)

集めるお金

  • 自己資金 120万円

    勤めていた10年の間に、計画的に貯めた

  • 創業向けの融資 240万円

    日本政策金融公庫から借りる。5年で返す(元金は月4万円)

何に、いくら使うかを、事業計画書で説明する

開業資金 360万円

  • 設備資金210万円(内装の工事、施術ベッドなどの備品、物件の保証金など)
  • 運転資金150万円(売上が少ない最初の数か月の支払い)

設備資金は、店の内装や備品、物件を借りるときの保証金など、開業の準備に使うお金です(内装の工事130万円、施術ベッドなどの備品50万円、物件の保証金など30万円)。運転資金は、家賃などの毎月の支払いにあてるお金です。〇〇整体院は、売上が少ない最初の6か月で手元のお金が約71万円減る見込みなので、余裕を持たせて150万円にしました。融資は、元金のほかに利息も払います。売上と費用の見積もり方は「事業計画書を作る」で説明しています。

自己資金を準備する

「融資を受けるなら自己資金はいらないのでは?」と思うかもしれませんが、逆です。自己資金は、融資の審査で大事な項目の1つです。ただし日本政策金融公庫は、自己資金は重要な要素の1つだが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だ、としています。

  • 計画的に貯めてきた自己資金は、起業への本気度と計画性の証明になる
  • 自己資金が多いほど借入額を抑えられ、毎月の返済負担が軽くなる

なお、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の案内には、自己資金が開業資金の何割以上という決まりは書かれていません(2026年10月に確かめました)。〇〇整体院の割合(3分の1)は、架空の例です。

創業のときに使える融資

実績のない創業者が使いやすい融資は、主に次の2つです。

日本政策金融公庫の創業融資

創業時の融資で、まず検討したいのが日本政策金融公庫(公庫)です。公庫は国が100%出資する政策金融機関(国の政策に沿ってお金を貸す金融機関)で、実績のない創業者への融資に積極的という、民間の銀行にはない特徴があります。

  • 創業前・創業直後でも申し込める。代表的な制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、新たに事業を始める人から、開業後おおむね7年以内の人までが対象(民間の銀行は、実績のない会社への融資に慎重)
  • 創業期(開業後の税務申告を2期終えていない人)は、原則として無担保・無保証人で借りられる(返せなくなったときに差し出す財産〔担保〕や、代わりに返す人〔保証人〕を用意しなくてよい)
  • 契約したときの金利が最後まで変わらない固定金利で、返済の期間も長い(設備の資金は20年以内、運転の資金は10年以内)

創業者向けの融資制度は、名称や要件が変わることがあります。申し込みの前に、必ず日本政策金融公庫の「創業融資のご案内(新しいタブで開きます)」や窓口で、最新の制度を確かめてください。

信用保証協会付き融資(制度融資)

もう1つの選択肢が、信用保証協会の保証を付けて民間の金融機関から借りる方法です。都道府県や市区町村が金利や保証料(保証協会に払う、保証のためのお金)の一部を負担してくれる「制度融資」として用意されていることが多く、地域によっては公庫よりも有利な条件になる場合があります。

  • 信用保証協会が保証人の役割を担うため、実績のない創業者でも民間金融機関から借りやすくなる
  • 自治体の制度融資は、金利・保証料の補助がある場合が多い
  • 地元の金融機関との取引実績ができ、その後の付き合いにつながる
  • 創業向けの保証(創業関連保証など)や、経営者の個人保証(会社の借金を、経営者が個人としても保証すること)が要らない「スタートアップ創出促進保証」もある(全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方(新しいタブで開きます)」)

制度融資は自治体ごとに内容が異なります。「(自分の市区町村名) 制度融資 創業」で検索するか、商工会議所・商工会に相談してみましょう。

審査で見られることと、事業計画書

相談の机をはさんで、院長が青緑のファイルを開き、棒グラフの形が描かれた計画を見せながら説明している。向かいでは、灰色のスーツの担当者がメモを取りながら聞いている
融資の相談で、事業計画書をもとに「なぜ売れるか」を説明する院長(架空の例)

審査で見られるポイント

創業融資の審査には、決算書などの過去の実績がありません。その分、「この人は返済できるか?」が、一般に次のような観点から判断されると言われます(日本政策金融公庫は、審査の項目を公表していません)。

  • 自己資金 ─ 計画的に準備してきたか
  • 経験・経歴 ─ 始める事業に関する経験やスキルがあるか
  • 事業計画 ─ 売上の根拠があるか。「がんばります」ではなく数字で語れているか
  • 返済可能性 ─ 利益から毎月の返済額を無理なく払えるか
  • 信用情報 ─ 税金や公共料金の滞納、借入の延滞がないか

つまり、審査で問われるのは「準備の質」です。創業計画書(創業する人向けの事業計画書)の書き方は、日本政策金融公庫の「創業計画の書き方(新しいタブで開きます)」も参考になります。

事業計画書の重要性

上の観点の中で、自分の努力でいちばん差をつけられるのが事業計画書です。このサイトの著者も、事業計画書で評価された経験があります。

私は鹿児島市のニュービジネスプランコンテストで2年連続大賞をいただきましたが、特別なアイデアだったからではなく、「顧客のニーズ → 競合の弱み → 自社の強み → 売上の根拠」という筋道を、分析にもとづいて説明できたことが大きかったと考えています。

融資の審査も同じです。審査する側が知りたいのは、夢の大きさではなく、「なぜこの事業で売上が立つのか」という根拠のつながりです。

  1. 顧客・競合・自社の事実を集める(「3C分析」など)
  2. 「誰に・何を・どのように」売るかを決める(「事業戦略を策定する」)
  3. それを数字(売上計画・資金繰り)に落とし込む(「事業計画書を作る」)

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