数字を経営の道具にする

決算書は、次の4つの段階で経営に活かします。

決算書を経営に活かす流れ
  1. 4つの率を出す

    粗利率、営業利益率、自己資本比率、流動比率

  2. 比べる

    前の年、計画、同業と

  3. 理由を言葉にする

    差が出た理由と、これからの手当て

  4. 計画に活かす

    事業計画書の数字に根拠を持たせる

数字を自分の言葉で語れることが、金融機関の信用になる

代表的な経営分析指標

決算書の数字は、割り算して「率」にすると、規模の違う会社や過去の自社と比べられる道具になります。小さな会社がまず押さえるべき指標は、次の4つで十分です。

小さな会社がまず見る4つの指標
指標計算のしかた何を測るか
売上総利益率(粗利率)売上総利益(売上から仕入れや材料の費用を引いた儲け)÷ 売上高商売そのものの儲ける力(第2回)
売上高営業利益率営業利益 ÷ 売上高本業の収益性
自己資本比率純資産(返さなくてよいお金)÷ 総資産(資産の合計)会社の安全性・倒産しにくさ(第3回)
流動比率流動資産 ÷ 流動負債短期の支払い能力。1年以内に支払うお金(流動負債)を、現金・預金や、1年以内に現金化できる資産(流動資産)でまかなえるか

例: 〇〇整体院の4つの指標

この講座の例「開業1年目の〇〇整体院」(仕事帰りの会社員向けの、院長1人の小さな株式会社)の、1年目の決算書で計算します。

〇〇整体院の1年目の4つの指標(単位は万円。架空の例)
指標計算読み方
粗利率売上総利益 523 ÷ 売上高 540 = 約97%仕入れが少ない商売なので高い
営業利益率営業利益 −59 ÷ 売上高 540 = 約−11%本業が赤字。売上が、販管費(給料や家賃など)をまかなうのに足りない
自己資本比率純資産 50 ÷ 総資産 249 = 約20%開業の日の約33%(120 ÷ 360)から、赤字の分だけ下がった
流動比率流動資産 59 ÷ 流動負債 55 = 約107%1年以内に払う55(返済48と税金7)を、現金・預金と売掛金(まだ入金されていない売上)の59で、ぎりぎりまかなえる

比較してこそ意味がある

指標は、単年の数字を眺めるためではなく、比べるためにあります。比べ方は3つです。

  • 時系列で比べる ─ 自社の3〜5年の推移。良くなっているのか、悪くなっているのか
  • 計画と比べる ─ 事業計画書の数値計画との差。差が出た理由を言葉で説明できるか
  • 同業と比べる ─ 業種平均(中小企業実態基本調査などの公的な統計)と大きくズレていないか

〇〇整体院は1年目なので、比べる相手は開業の日と計画です。開業の日と比べると、自己資本比率は約33%から約20%に下がりました。計画と比べると、7か月目から見込んだ1日4人に届かず、社会保険料などの費用も多かったため、黒字の計画が赤字になりました(第2回)。

金融機関は決算書のどこを見るか

融資の審査で、金融機関は決算書からおおよそ次の点を確認しています。この講座で学んできた場所ばかりです。

  • 債務超過でないか ─ 純資産がマイナスなら、新規の融資は極めて難しくなります(第3回)
  • 経常利益が出ているか ─ 利息を払ったうえで、ふだんの経営が黒字か(第2回)
  • 借入金の重さ ─ 借入金の残高が、年間の返済能力(利益+減価償却費)に対して大きすぎないか
  • 数字を説明できるか ─ 増減の理由や今後の見通しを、経営者自身の言葉で語れるか

最後の一つだけは、書類ではなく経営者そのものが見られています。数字をよく見せる細工(粉飾)は論外ですが、悪い数字を隠す必要もありません。悪い数字でも、理由と対策を語れる経営者は信頼されます。

〇〇整体院の1年目に当てはめると、純資産は50万円で、債務超過ではありません。ただ、経常利益は−63万円で、返済能力(当期純利益−70万円+減価償却費20万円)も−50万円です。減価償却費は、その年にお金が出ていかない費用なので、利益に足し戻して返済の元手を見ます。1年目の返済48万円は、利益からではなく、開業のときに用意した手元のお金から出ています。だから院長には、冒頭の流れ図の3番目「理由を言葉にする」の準備が要ります。

決算書を読む力は、事業計画書を書く力

決算書が読めるようになると、事業計画書の数値計画(売上計画・損益計画・資金繰り計画)が「作れる」ようになります。過去の数字の構造がわかっていれば、未来の数字に根拠を持たせられるからです。この講座で身につけた見方を、次は「書く側」で使ってみてください。計画を「言葉のパート」(顧客・競合・強み)から通しで作るなら、事業計画づくり実践講座(全8回)から始めるのがおすすめです。

著者の実例: 数字を自分の言葉で語れることが信用になる

ここからは、著者の実例です。計画の数字の根拠を、決算書から説明できたときの話です。

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