「だから何?」で、機能を顧客の得に言い換える(〇〇整体院の例)
  1. 機能(できること)

    平日21時まで受け付ける

  2. 測れる得

    休日に出かけず、仕事帰りに通える

  3. 気持ちの得

    休日を、自分の時間に使える

得まで言い換えると、価値提案の1文の材料になります

機能を、顧客の得に言い換える(シートA)

商品を説明するとき、多くの人は「何ができるか」(機能)を並べてしまいます。機能には、商品の性能だけでなく、営業時間、対応のしかた、教えること、予約の受け方なども入ります。これを、顧客の得(ベネフィット)に言い換えます。得には2種類あり、両方を書けると、価値は強くなります。

  • 測れる得(機能的便益): 速くなる、手間が減る、正確になる、安くなる。時間やお金など、数字で測れる得
  • 気持ちの得(情緒的便益): 不安が減る、安心して任せられる、面倒から解放される。数字にならないが、選ばれる理由になる得

書き方のこつは、機能に「だから顧客はどうなる?」と問い、さらに「だから、どんな気持ちになる?」まで下ろすことです。

価値提案を1文にする(シートB)

得が見えたら、次の型で、顧客に約束する価値(価値提案)を1文にまとめます。長い説明は覚えてもらえません。

  1. ◯◯(誰が): 年齢や性別ではなく、どんな仕事や暮らしで、どんな場面で困っている人か(第2回で確かめた相手)
  2. △△(何ができる): シートAの得のうち、相手がいちばん強く望む得
  3. □□(どんな手段): 商品やサービスの形。シートAの機能のうち、競合が同じことを言えない点を1〜2個

「誰が」がぼやけると、1文全体がぼやけます。また、「丁寧」のように、どの会社でも言えることは、競合が言えない点になりません。

記入例: 開業前の〇〇整体院の、得と価値提案

記入例は、隣の市の整体院で10年勤めた院長が、〇〇駅の近くに1人で整体院を開こうとしている場合です。第2回で確かめた佐藤さん(肩こりで眠れず、仕事帰りに通える整体を探す会社員)の困りごとから、3つの機能を得に言い換えました(架空の例。人物は仮名)。

記入例: 院長の機能と得(シートA)
機能(できること)測れる得気持ちの得
平日21時まで受け付ける(予約制)休日に出かけなくても、仕事帰りに体を整えられる休日を、自分の時間に使える
毎回同じ院長が担当する体の状態を、毎回一から話さずにすむ自分の体をわかっている人に任せられる
仕事中の姿勢から見直し、家でできる体操も教える通う合間も、家で自分で整えられる(「すぐ元に戻る」という不満に応える)自分でもできることがある、と思える

「何ができる」には、3つの得のうち、佐藤さんがいちばん望む「休日をつぶさずに、仕事帰りに体を整えられる」を、「どんな手段」には、近くの整体院が言えない「平日21時まで」と「毎回同じ院長が姿勢から見直す」を入れました。

事業全体を1枚で見る(シートC: ビジネスモデルキャンバスの下書き)

よい価値提案ができても、届け方や毎日の仕事、お金の出入りとつながっていなければ、事業になりません。そこで最後に、ビジネスモデルキャンバス(BMC)という9つの欄の枠で、事業全体を1枚で見渡します。中心は、ここまでで固まった「顧客セグメント(相手にするお客さんの集まり)」と「価値提案」です。残りの7つは1行の下書きで十分で、お金の欄は第5回で詰めます。この下書きは、第8回で書く創業計画書の「取扱商品・サービス」や「取引先」の欄の材料にもなります。

記入例院長のビジネスモデルキャンバスの下書き(シートC)

顧客セグメント

誰に売るか

  • デスクワークの肩こりで、夜に眠れない会社員(佐藤さん)

価値提案

どんな困りごとを解決するか

  • 休日をつぶさずに、仕事帰りに体を整えられる(上の1文)

チャネル

どう知ってもらい、届けるか

  • 地図アプリと検索
  • 予約は電話で受ける

顧客との関係

どう続けて選んでもらうか

  • 毎回同じ院長が、前回の続きから見る
  • 強い勧誘はしない

収益の流れ

何でお金をもらうか

  • 施術1回ごとの料金(第5回で決める)

キーリソース

欠かせない手持ちのもの

  • 院長の施術の腕
  • 駅の近くの店(これから借りる)

主要活動

毎日する大事な仕事

  • 施術と、家でできる体操の指導

キーパートナー

手伝ってくれる外の相手

(まだいない)

コスト構造

何にお金がかかるか

  • 店の家賃
  • 開業のときの内装と施術ベッド(第5回で詰める)

丸の数字は、書く順番です。

欄どうしのつながりの確かめ方は、「ビジネスモデルキャンバス」で説明しています。

著者の実例: このサイトの場合

ここからは、著者が、このサイトの事業で機能を得に言い換えた実例です。慣れたら、この実例のように、測れる得と気持ちの得を1つの列にまとめた2列の表でもかまいません。文中の「フレームワーク」は事業を整理する考え方の枠、「伴走」は書き上げるまで横で支えること、「9ブロック」は BMC の9つの欄のことです。表の「AIプラン」(AI の機能をまとめた月額の有料プラン)と伴走のサービスは、今は休止しているツールを前提にした計画です。

「解説サイト」を機能からベネフィットへ翻訳する

このサイトの機能→ベネフィット2列表は、次のようになりました。

機能(提供するもの) ベネフィット(顧客の得)
フレームワークの解説 自分の事業に当てはめて考えられるようになる
受賞した事業計画書の実例公開 「合格ライン」の具体的なイメージが持てる
無料のWebサイト 思い立った夜にすぐ、費用の心配なく学び始められる
経営分析ツール(無料・要会員登録) 学んだことをその場で自分の事業に書き込み、保存して積み上げられる
AIプラン(有料・月額。継続サポートもこの中) 書きかけの計画書を、融資に出せる水準まで磨き上げられる

そして、価値提案の1文はこうです。「起業を考えている人が、実例で学び、ツールで書き、融資・補助金に通る事業計画書を自分で仕上げられるようになる伴走サービス」

この実例の1文を型に当てはめると、◯◯(誰が)は「起業を考えている人」、△△(何ができる)は「融資・補助金に通る事業計画書を自分で仕上げられる」、□□(どんな手段)は「実例で学び、ツールで書く伴走サービス」です。

書き出してみよう