この講座の進め方と、記入例の整体院
各回で書き出したシートを、第7回で1つの計画に束ね、第8回で日本政策金融公庫の「創業計画書」(融資を申し込むときに出す、計画の書類)に書き写します。
記入例は、〇〇整体院の院長(40歳。整体の専門学校を出て、隣の市の整体院で10年勤めた)が、開業の前に、この講座の順番で計画を作った場合です。デスクワークの会社員が、仕事帰りに通える整体院を開こうとしています(架空の例。〇〇駅には実際の駅名が入ります。ほかの記事では、開業1年目の同じ整体院として出てきます)。
棚卸しで書き出すもの
棚卸しは、持っているものを全部書き出して確かめることです。次の図のように2枚のシートを書き、強みの候補を見つけます。動機が言葉になっていると、迷ったときに「何のために始めたのか」に立ち返れます。
書き出す2枚
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手順1創業の動機シート
いつ、何がきっかけで、そのとき自分は何をしたか
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手順2キャリア棚卸シート
職歴、実績、資格・技能、人脈と、それぞれが事業のどこに効くか
手順3強みの候補に印を付ける(判定は第4回)
書き上がるもの
「なぜ、自分がこの事業をやるのか」を言える1文と、強みの候補
書いた動機と経験は、第4回で強みを確かめる材料になり、第8回では、創業計画書の「創業の動機」と「経営者の略歴等」の欄の材料になります(年月や資格などを補って書き写します)。
棚卸しのやり方(4つの手順)
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動機を、時期の順に書く(創業の動機シート)
きっかけだけでなく、そのとき自分が実際に動いたこと(調べた、学んだ、試した)を、時期の順に並べます。動いた事実が並ぶほど、動機の本気度が伝わります。
きっかけは、「困っている人を見た」「自分が困った」という具体的な場面まで掘り下げます。「なぜ、それが気になったのか」を3回ほど自分に問うと、本当の動機が見えてきます。
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経験を、事業のどこに効くかと一緒に書く(キャリア棚卸シート)
職歴と経験年数(どの業界で、何年、どんな役割か)、実績、資格・技能(資格がなくても、独学で身につけた技能でよい)、人脈(相談できる相手や、最初のお客さんになりそうな知人)を並べ、それぞれに「これが事業のどこに効くか」を1行添えます。この1行が、ただの履歴書との違いです。どこに効くかを書けない項目は、今回の事業と関係が薄いので、空欄でかまいません。
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強みの候補に、印を付ける(判定はしない)
どこに効くかを書けた項目が、強みの候補です。次の2つの問いに「たぶん当てはまる」と思えたものに、「どこに効くか」の欄で印を付けます。
- 価値: 顧客の役に立つか。困りごとを解けるか
- 希少性: それを持っている人や会社は、周りに少ないか
本当に強みかどうかは、ここでは決めません。周りに少ないかどうかは、競合を調べないとわからないからです。第4回で競合がそろってから、「VRIO分析」(ブリオ。強みが、競合に勝ち続けられるものかを確かめる4つの問い)で確かめます。
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2枚をつないで、「なぜ自分か」を1文にする
最後に、動機シートのきっかけと、キャリア棚卸シートの「事業に効く」経験や技能をつないで、「なぜ、自分がこの事業をやるのか」を1〜2文にまとめます。
記入例: 開業前の〇〇整体院の院長
院長が書いた2枚です(架空の例)。
| 時期 | きっかけ・出来事 | そのとき自分が動いたこと |
|---|---|---|
| 勤めていたころ | 勤め先の整体院は19時に閉まり、仕事帰りの会社員から「夜もやっている所はないか」と何度も聞かれた | 聞かれた日を、手帳に付け始めた |
| 昨年 | 〇〇駅の周りに、オフィスビルが増えていた | 休みの日に、駅の周りの整体院が何時まで受け付けているかを調べた。どこも19時ごろに閉まっていた |
| 今 | 会社員が仕事帰りに通える整体院を、自分で開くと決めた | この講座で、計画を書き始めた |
| 項目 | 具体的な内容 | 事業のどこに効くか |
|---|---|---|
| 職歴・経験年数 | 整体の専門学校を出て、隣の市の整体院で10年、施術を担当 | 施術の腕と、予約制の整体院の1日の回し方がわかる |
| 実績 | デスクワークの会社員の、常連のお客さんを多く受け持った | 会社員の困りごとと、ふだん使う言葉がわかる |
| 資格・技能 | 仕事中の姿勢の見直しと、家でできる体操の教え方 | ○ 会社員からよく聞いた「もみほぐしでは、すぐ元に戻る」という不満に応えられる |
| 人脈 | 〇〇駅の周りの会社に勤める知人が、数人いる | 開業の前に、会社員の困りごとを聞かせてくれる人や、試しに施術を受けてくれる人を紹介してもらえる |
印を付けたのは、「姿勢の見直しと、家でできる体操」の1つです。「すぐ元に戻る」という不満に応えられ(価値)、会社員が今しのぐのに使っている、もみほぐしの店や湿布にはない(希少性)と見ました。会社員を多く見てきた経験は、ほかの整体師も持っていそうなので、印を付けていません。
著者の実例: このサイトの場合
ここからは、著者が、このサイト(起業の経営学)の事業で同じ2枚を書いた実例です。もとはこの講座の記入例として書かれたもので、第7回まで続き、第8回で創業計画書の草案になります。起業する人に情報を届ける事業の例として読んでください。文中の「ITコーディネーター」は IT を経営に活かす手伝いをする専門家の資格、「競争優位」は競合に勝てる強み、「通販管理システム」は著者が最初に起業したときの事業です。
書き出してみよう
あなたの棚卸し(2枚のシートと1文)
- 創業の動機シート: 時期、きっかけ・出来事、そのとき自分が動いたことを、3行ほど
- キャリア棚卸シート: 職歴・経験年数、実績、資格・技能、人脈と、それぞれが事業のどこに効くか(書けない項目は空欄でよい)
- 強みの候補: 価値と希少性の2つの問いに「たぶん当てはまる」ものに、「どこに効くか」の欄で印
- 「なぜ自分か」の1文: 動機と経験をつないで、1〜2文で
記入例は、上の「記入例: 開業前の〇〇整体院の院長」です。
次のステップ
第2回では、事業が成り立つかを決める顧客の困りごとを1文にして、現場で確かめます(「第2回 顧客の課題を1文で決め、現場で確かめる」)。書いた動機を、会社が大事にする考え(経営理念)に育てる方法は、「経営戦略を策定する」で説明しています。
