7回分のシートが、創業計画書になる

これまでのシート

  • 第1回 動機と経験

    → 項目1、2

  • 第2〜5回 顧客、価値、競合、値段

    → 項目3

  • 第5〜7回 値段、試しの結果、売上の材料

    → 項目9、10

今の事実(項目4〜7)と、開業にかかるお金の見積もり(項目8)を足す

創業計画書(A4 横1枚、10項目)

借入の申込書に添えて出す

創業計画書とは

公庫が「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」として用意している様式です。公庫のホームページの「各種書式ダウンロード(新しいタブで開きます)」から Excel と PDF で手に入り、美容業や学習塾など9業種の記入例もあります。様式には、書ける範囲で書けばよいこと、面談の時間を短くするために使うこと、自分で作った計画書で代えてもよいことが書かれています。

様式は変わることがあるので、書く前に最新のものを確かめてください。融資の制度は「融資・資金調達」で説明しています。

読む人が確かめること

公庫は、審査の項目を公表していません。一般には、次のような点が見られると言われます。

  • 一本の筋: 動機、経験、商品、見通しがつながり、始める事業と経験がかみ合っているか(第7回で通して読んだ筋)
  • 数字の根拠: 売上が願望ではなく、「客単価 × 客数 × 日数」の積み上げで説明できるか。開業前に小さく試して、人がお金を払った事実があれば、強い根拠になる
  • 正直さ: 弱みは隠さず、対策と一緒に書く。お借入の状況も、ありのまま書く。公庫は、申し込む人の同意を得て、個人の信用情報(ローンやカードの契約と返済の記録)を、信用情報機関に問い合わせます

10の項目に書き写す(記入例: 開業前の〇〇整体院)

記入例は、隣の市の整体院で10年勤めた院長が、〇〇駅の近くに1人で、平日21時まで受け付ける整体院を開こうとしている場合です(個人で開業する場合とします。架空の例)。10の項目ごとに、材料になる回と、院長の下書きを並べました。前の回を読んでいない人も、まずこの下書きをまねて、書ける項目から埋めてみてください。

1 創業の動機(材料: 第1回)
勤めていた整体院は19時に閉まり、仕事帰りの会社員から「夜もやっている所はないか」と何度も聞かれた。会社員3人への聞き取りと、駅の近くの部屋を平日の夜だけ4週間借りた試し(12人が料金を払って受けた)で、仕事帰りに通いたい人がいると確かめた。会社員が仕事帰りに通える整体院を開く
2 経営者の略歴等(材料: 第1回。勤め先の名前だけでなく、担当した仕事と身につけた技能も書く)
整体の専門学校を卒業。隣の市の整体院に10年勤め、施術と、姿勢の見直し、家でできる体操の指導を担当。事業を経営したことはない
3 取扱商品・サービス(材料: 第2回〜第5回)
整体(1回60分 6,000円)。セールスポイント: 平日21時まで受け付け、毎回同じ院長が姿勢から見直す。販売ターゲット・販売戦略: 駅の周りで働くデスクワークの会社員。地図アプリと検索で知ってもらう。競合・市場: 駅の近くの整体院は19時に閉まる。もみほぐしの店は60分5,000円ほど。営業: 平日10時〜21時、土曜10時〜17時(月24日)
4 従業員(今の事実を書く。3か月以上続けて雇う予定の人)
なし
5 取引先・取引関係等(今の事実を書く)
販売先は一般の個人(その場で現金かカード)。仕入先と外注先はなし
6 関連企業(今の事実を書く。自分か配偶者が経営する会社)
なし
7 お借入の状況(今の事実を書く。住宅、車、カードなどの借入も)
なし
8 必要な資金と調達方法(材料: 内装や備品の見積もりと、「融資・資金調達」)
必要な資金 360万円: 設備資金210万円(内装の工事130万円、施術ベッドなどの備品50万円、物件の保証金など30万円)、運転資金150万円。調達 360万円: 自己資金120万円、日本政策金融公庫からの借入240万円(5年で返す。元金は月4万円)
9 事業の見通し(月平均)(材料: 第5回〜第7回と、「事業計画書を作る」)
下の表と、根拠
10 自由記述欄(アピールしたい点、事業の悩み、ほしい助言を書く欄。材料: 全部の回)
アピールポイント: 開業の前の試しで、12人が料金を払って受け、4人が次の予約をした。ほしい助言: 仕事帰りの会社員に知ってもらう方法
記入例: 9 事業の見通し(月平均。単位は万円)
項目創業当初(1〜3か月目)軌道に乗った後(7か月目から)
売上高28.857.6
売上原価(仕入高)00
経費: 人件費00
経費: 家賃1010
経費: 支払利息借りるときの利率で計算同じ
経費: その他8.49.9
利益10.437.7

根拠(9の欄に書く): 売上は「6,000円 × 1日のお客さん(2人から始め、7か月目から4人) × 24日」。品物を仕入れないので売上原価は0円。経費のその他は、広告3万円、水道光熱費と通信費2万円、そのほか2万円に、消耗品とカードの手数料(売上の5%)を足した。個人の開業なので、人件費に院長の分は入れない(様式の注)。表の利益は支払利息を除いた額。

検算: 軌道に乗った後の利益37.7万円から、院長の生活費25万円(引くと12.7万円。「事業計画書を作る」の表の利益)と返済の元金4万円を引いても、毎月8.7万円が残ります。創業当初は毎月18.6万円、4〜6か月目は毎月約5万円足りず、この半年の不足(約71万円)を運転資金150万円でまかないます(6か月目の終わりに約79万円が残る見込み)。

書き方のこつ

  • 盛らない: 略歴、数字、借入は、確かめられる前提で書く
  • 空欄を放っておかない: 書けない項目は、材料がないサイン。その回に戻る
  • 欄の広さに合わせる: 欄は狭いので、記入例のように要点を書き、くわしい説明や見積もりは別の紙にして添える
  • 数字を検算する: 必要な資金と調達の合計が同じか。利益から借入を返せるか(個人なら、生活費も利益から出す)

書き終えたら、公庫の「創業計画書セルフチェックリスト(新しいタブで開きます)」で見直します(見積もりを相場で確かめたか、半年ほどの赤字を補う運転資金を考えたか、など)。

著者の実例: このサイトの草案

ここからは、著者が、このサイトの事業で書いた創業計画書の草案です。もとはこの講座の記入例として書かれたもので、店を持たない Web サービスの例として読んでください(借入をせず、自己資金で始める計画です)。草案は8項目で書かれています。今の様式は10項目で、「関連企業」と「自由記述欄」が加わり、「従業員」と「取引先・取引関係等」の順番が入れ替わっています。文中の「段階導線」は無料から有料へ進んでもらう流れ、「自社工数」は自分で作る手間、「トークン数」は AI が処理する文字の量、「粗利率」は売上から売上原価を引いた残りの割合、「ウェイトリスト」は順番待ちの事前登録です。草案では、決済の手数料を売上原価に入れています(整体院の例では経費に入れました)。

実際の8項目(草案の実物)

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