3つの方向から、値段の幅を出す(〇〇整体院の例)

値段を決める3つの方向

  • 下限(かかるお金)

    約5,100円。これより下では続けられない床

  • 相場(競合の値段)

    もみほぐしの店 5,000円ほど、近くの整体院 6,000円ほど

  • 上限(顧客の得)

    7,000円ほど。納得して払える天井

幅の中で、立ち位置に合う値段を選ぶ

院長が決めた値段

1回60分 6,000円(1回ごとに受け取る)

値段は、3つの方向から決める

同じ数が売れるなら、原価を1割下げるより、値段を1割上げるほうが、利益への効き方はずっと大きくなります。だからこそ、上の図のように、下限(床)、相場(顧客が見比べる基準)、上限(天井)の3つの数字を出し、その幅の中で選びます。相場は、同業の相手や、顧客が今代わりに使っている手段の値段です(第4回の比べる表)。

下限: かかるお金から、床を出す

次の4つを、1回(1個)あたりの金額にして足します。

  1. 原価(変動費): 1回売るごとにかかるお金(材料、仕入れ、消耗品、カードの手数料など)
  2. 自分の時間: 自分が働いた時間の分の人件費
  3. 固定費の割り振り: 家賃など、売上がなくてもかかるお金の、1回あたりの分
  4. 目標の利益: 借入の返済など、最低限残したい取り分

2〜4は、1か月に必要なお金(自分の生活費、毎月の固定費、借入の返済)を、軌道に乗ったあとに見込む月の回数で割ります。開業してすぐの少ない回数で割ると、下限が高くなりすぎるためです。1人で始める人がいちばん抜かしやすいのが、自分の時間です。0円で計算すると、「売れているのに手元に残らない」状態になります。

上限: 顧客の得から、天井を出す

上限は、顧客が納得して払える額で、顧客が得ることをお金に置きかえて考えます。会社に売る事業なら、増える売上、減る費用(人件費やミスによる損)、浮く時間。個人に売る事業なら、今の対処法に払っているお金と時間が目安になります(第2回で聞いた「かけている時間とお金」)。きっちり計算しなくてかまいません。大まかな目安で十分です(本当に払ってもらえるかは、第6回で試して確かめます)。

3つがそろったら、並びを読みます。下限が相場より高ければ、そのままでは戦えないので、原価を下げるか、立ち位置(第4回)を見直します。上限が相場より高ければ、価値が伝われば、相場より上でも売れる余地があります。

収益モデル(お金の受け取り方)を選ぶ

値段が決まったら、次は「どう受け取るか」です。同じ金額でも、受け取り方で、手元のお金の出入り(資金繰り)が大きく変わります。

収益モデルの主な型
型受け取り方向いている場面
売り切り1回ごとに全額を受け取る1回で終わる商品
月額(サブスク)毎月、決まった額を受け取る続けて使ってもらう
従量課金使った分だけ受け取る使う量の差が大きい
初期費用+保守始めるときにまとまった額と、続けて支える分導入したあとも支える

どれが正しいということはなく、自社のお金の事情で選びます。先にまとまったお金が要るなら売り切りや初期費用型、毎月の収入を安定させたいなら月額が向きます。値段を1つだけ出すと、顧客は「高いか安いか」で考えます。梅(機能を絞り、入り口を下げる)、竹(本命の標準)、松(手厚い上位)の3段階にすると、「どれにするか」で考えるようになり、真ん中が選ばれやすくなります。1人で始める店は、まず本命の1つから始めてもかまいません。決めた値段と受け取り方は、第3回のビジネスモデルキャンバスの「収益の流れ」と「コスト構造」の欄にも書き足します。

記入例: 開業前の〇〇整体院

記入例は、隣の市の整体院で10年勤めた院長が、〇〇駅の近くに1人で、仕事帰りの会社員向けに平日21時まで開こうとしている整体院です。1回60分の施術の値段を、次のように決めました(架空の例。人物は仮名)。

記入例: 院長の下限(1回60分あたり)
足すもの1回あたり出し方
原価(変動費)約300円タオルやオイルなどの消耗品と、カードの手数料(売上の5%)
自分の時間約2,600円院長の生活費 月25万円 ÷ 月96回
固定費の割り振り約1,800円家賃などの固定費 月17万円 ÷ 月96回
目標の利益約400円最低限の、開業資金の借入の返済 月4万円 ÷ 月96回
合計(下限)約5,100円

月96回は、軌道に乗ったあとの見込み(1日4人 × 月24日)です。

院長が、白い値札を手に、あごに手を当てて考えている。横の天びんの左の皿には、小さな店、たたんだタオル、時計がのり、右の皿には、月と枕、太陽とかごがのって、釣り合っている
かかるお金(左の皿)と、顧客の得(右の皿)の間で、値段を決める(架空の例)
  • 相場: 第4回の比べる表から、もみほぐしの店は60分5,000円ほど、駅の近くの整体院は60分6,000円ほど
  • 上限: 顧客に思い描いた佐藤さん(38歳の経理事務。月末は20時ごろまで残業し、肩こりで眠れない)は今、休日のもみほぐし(月に1〜2回、1回5,000円ほど)と湿布にお金を使い、休日の時間も使っている。仕事帰りに通えて、毎回同じ院長が見る分を足して、7,000円ほどと見た

著者の実例: このサイトの場合

ここからは、著者が、このサイトの事業で値段と受け取り方を決めた実例です。「段階型」は、無料で使える段階から始め、先へ進む人にだけ料金をいただく形です。「AIプラン」は AI の機能をまとめた月額の有料プラン、「伴走」は仕上げるまで横で支えること、「工数」は自分が働く時間、「3方式」はこの回の3つの方向、「BMC」は第3回で書いたビジネスモデルキャンバスのことです。

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