この回で作る、立ち位置の図(ポジショニングマップ)の例です。記入例は、隣の市の整体院で10年勤めた院長が、〇〇駅の近くに1人で開こうとしている〇〇整体院です。顧客が選ぶ理由を2つの軸にして、競合を置くと、空いている所が見えます。

記入例開業前の〇〇整体院の立ち位置の図

受付は夕方まで

20時以降も受付

体を見てもらえる

  • 駅の近くの整体院(19時まで)
  • 整形外科(診察は夕方まで)

空いている → ここをねらう

仕事帰りに通えて、毎回同じ院長が姿勢から見直す

その場でしのぐ

目立つ相手はいない。困りごとも解けないので、ねらわない

  • もみほぐしの店(夜も開いている店がある。すぐ元に戻る)
  • 市販の湿布、今まで通りのがまん(その場しのぎ)

右上のマス(仕事帰りに通えて、体を見てもらえる)には、誰もいません。しかも、第2回で確かめたお客さん、佐藤さん(38歳の経理事務。月末は会社を出るのが20時ごろで、駅の近くの整体はもう閉まっている)の困りごとは、ちょうどこのマスにあります。左下のマスも空いていますが、そこには困っている人がいないので、ねらいません。架空の例です(人物は仮名)。

競合を3種類で書き出す(シートA)

顧客は、あなたの商品と同業の商品だけを並べて比べているのではなく、「その困りごとを解決する手段」の全体から選んでいます。そこで、競合を次の3種類に分け、どれも最低1つは書きます。時間帯ややり方が少し違っても、顧客が同じ種類の店や商品として思い浮かべる同業は、直接競合に入れます。「競合は1つもいない」と思えたら、市場がないか、顧客が比べている相手が見えていないかのどちらかです。

  • 直接競合: 同じ顧客に、同じような形で、同じ価値を届けている相手
  • 間接競合: 形は違うが、同じ困りごとを別の方法で解決している相手
  • 無消費: お金を払わず、今のやり方でしのいでいる状態(何もしない、今まで通り)

書き出すこつは、顧客が今その困りごとを何でしのいでいるか(第2回で聞いた「今の対処法」)から逆算することです。小さな会社にとって、いちばん手ごわい競合は、他社ではなく「今まで通り」です。慣れたやり方は楽で、無料か安上がりに見え、困ってはいても後回しにされがちだからです。今まで通りをやめてでも動く理由を作ることが、この回の勝ち筋です。

比べて、空いている立ち位置を探す(シートB・C)

書き出した競合を、同じ物差しで並べます(シートB: 比べる表)。項目は、あなたが自慢したいことではなく、顧客が選ぶときに実際に見ることを4〜5個にします(料金、受付の時間や納期、やってくれる範囲、買ったあとの相談、始めやすさなど)。自社が勝てる項目だけを並べた表は、自分を安心させるだけです。「今まで通り」も1列入れておくと、第5回で値段を決めるときに、「今まで通りと比べて、払う値打ちがあるか」を考えられます。

どこが空いているかを見るために、上の図のような立ち位置の図(シートC: ポジショニングマップ)を作ります。

  1. 表の項目から、顧客がいちばん重く見る2つを選ぶ
  2. 2つを縦と横の軸にして、4つのマスを作る
  3. 自社と競合、今まで通りを、マスに置く
  4. 誰もいないマスを探し、そこに顧客の困りごと(第2回)があるかを確かめる。困りごとのないマスは、ねらわない

強みを、VRIO の4つの問いで確かめる(シートD)

第1回では、自分の経験や技能から、強みの候補に印を付けただけでした(読んでいなければ、自社の強みの候補を2〜3個思い浮かべてください)。強みは、競合と比べて初めて決まるからです。競合がそろった今、「VRIO分析」(ブリオ)の4つの問いに、順に「はい」か「いいえ」で答えます。

  • 経済価値(Value): 顧客は、それを理由に選んでくれるか
  • 希少性(Rarity): 同じことができる競合は少ないか
  • 模倣困難性(Imitability): 競合がまねするのに、時間やお金がかかるか(お金を出せばすぐできること、やり方を聞けばできることは「いいえ」)
  • 組織(Organization): その強みを毎回出し、顧客に伝える仕組みがあるか

「いいえ」が出たら、その先は答えません。経済価値か希少性が「いいえ」なら強みにならず、模倣困難性が「いいえ」なら「しばらくは勝てる」、組織だけが「いいえ」なら「宝の持ち腐れ」(仕組みを整えれば活きる)、4つとも「はい」なら「長く勝ち続けられる」強みです。力を注ぐのは、最後の2つです。1つずつはまねされやすい強みも、組み合わせると、まねしにくくなります。

最後に、空いている立ち位置(シートC)と強み(シートD)を合わせて、「(誰)の(どんな困りごと)を、(競合にはない自社の強み)で解決する」という1文にまとめます。この1文を、小さな会社が勝てる「すきま」と呼びます。

記入例: 開業前の〇〇整体院

院長は、平日の夜に〇〇駅の周りを歩いて店を見比べ、佐藤さんの今の対処法から、競合を3種類で書き出しました(シートA)。

  • 直接競合: 駅の近くの整体院(19時に閉まる。予約は電話だけ)
  • 間接競合: もみほぐしの店、整形外科(保険が使えるが、診察は夕方まで)、市販の湿布
  • 無消費: 新しい店は探さず、がまんして、湿布でしのぎ続ける(今まで通り)
記入例: 院長の比べる表(シートB。佐藤さんがよく比べる相手と、今まで通り)
顧客が見ること〇〇整体院(予定)駅の近くの整体院もみほぐしの店今まで通り
料金第5回で決める60分6,000円ほど60分5,000円ほど湿布代だけ
仕事帰りに通えるか平日21時まで19時に閉まる夜も開いている店がある出かけなくてよい
すぐ元に戻らないか姿勢から見直し、体操も教える体を見てもらえるすぐ元に戻るその場しのぎ
毎回同じ人が見るか院長1人なので、毎回同じ店による店による-

佐藤さんがいちばん重く見るのは、「仕事帰りに通えるか」と「すぐ元に戻らないか」の2つです。これを軸にしたのが、この回の初めの図です(シートC)。

強みの候補は、第1回で印を付けた「姿勢の見直しと体操」に、第3回で決めた「平日21時まで」と「毎回同じ院長」を加えた3つです。

記入例院長の強みを、VRIOで確かめる(シートD)
3つの強みの評価(○ははい、×はいいえ、-は答えなくてよい)
強み経済価値希少性模倣困難性組織強みの力
平日21時まで○○×-しばらくは勝てる
姿勢の見直しと体操○○×-しばらくは勝てる
毎回同じ院長○○○×宝の持ち腐れ

左から順に答える

営業時間と体操は、ほかの店もまねできます。毎回同じ院長が見ることは、通うほど院長が体のくせを覚えるので、すぐにはまねされません。ただ、活かす仕組み(施術の記録)と、良さを伝える口コミが、まだありません。そこで院長は、この強みに力を注ぎ、開業の日から施術の記録を残すことにしました。21時までは、まねされるまでの間の入り口にします。

著者の実例: このサイトの場合

ここからは、著者が、このサイトの事業で競合を3種類に分けた実例です。文中の「よろず支援拠点」は、国が47都道府県に置いている、無料の経営相談の窓口です。「受賞実例」は、著者がコンテストで大賞を受けた事業計画書の実例です。最後の「VRIOのV・R・Iに○」は、4つの問いのうち、組織を除く3つが「はい」だったという意味です。

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